MS、クロスライセンスを積極展開へ
「特許非係争条項は時代錯誤になっていた」──米MSの知財担当幹部はこう話し、今後はクロスライセンスで他社との信頼関係を築いていく考えだ。日本の大手企業とも交渉が進んでいるという。
米Microsoftの知的財産担当副社長・マーシャル・フェルプス氏が9月8日、都内で会見した。公正取引委員会が排除勧告したWindowsの特許非係争条項(NAP)について、「まだMicrosoftが小さかったころの条項であり、時代錯誤になってきた。変化に対応していかなければならない」と削除した理由を説明。今後は日本企業を含む他社とのクロスライセンス契約を積極化していく姿勢だ。
フェルプス氏は「NAPを導入した1990年代前半、Microsoftはまだ特許をあまり持っていなかったが、今は特許ポートフォリオを持っている。大企業となったMicrosoftには良い条項とはいえない」と述べた。NAPは2004年2月に削除を告知し、今年8月からのOEM直接契約には含まれていない。
同社は2003年から、知的財産について他社に開放する方針に転換。Windowsソースコードを各国の大学などに開示しているほか、今年4月末には東芝と包括的なクロスライセンス契約を結んだ(関連記事参照)。
フェルプス氏の今回の来日も「日本企業3〜4社と話し合っている。技術力のある非常に大きな企業だ」と、エレクトロニクス系と見られる大企業とのライセンス交渉が目的の1つだと明かした。
フェルプス氏によれば、クロスライセンスは知的財産の相互利用という面だけではなく、パートナー企業とMicrosoftとの「インタフェース」でもある。「信頼関係を構築するためのインタフェースだ。信頼の醸成には2〜3年はかかる。Microsoftはこうしたことに歴史が浅く、信頼してもらうことが必要だ」(フェルプス氏)
知的財産権保護の強化も継続する。ソフトウェア特許をめぐっては、オープンソース陣営を中心に「ソフトは著作権による保護で十分」と反対の声も強い。こうした主張をフェルプス氏は「商業活動をしている企業には受け入れられない考え方」と否定する。
「開発の成果を享受できる環境が必要であり、知的財産保護は開発のインセンティブでもある。IBMの特許を利用することでMicrosoftやApple、Ciscoなどが成長してきたように、強力な知的財産保護によって小さな企業も成長できる」(フェルプス氏)。
オープンソース自体については「競争はいいことだ。Microsoftも競争によって前進できる」としたが、ソフトウェア特許に関しては相容れないようだ。
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