「ポッドキャストを当たり前にしたい」――リスナーと作るネットの“音”:RAG FAIR土屋礼央に聞く(1)(2/2 ページ)
自由に楽曲をかけられないポッドキャストやネットラジオで、ミュージシャンは何を発信できるのか――成功例がないからこそトライするのが楽しいと、RAG FAIR土屋礼央さんは話す。
勝負は最初の20秒
ポッドキャスティングは“ツカミ”が重要と、いくつかの番組を聴いて気づいた。「最初の20秒で食いつきがなかったら、聞くのをやめてしまう。いかに頭からキャッチーなことをやるかが勝負」
引き付けるためには、間口は広いほうがいい。例えば、人気ポッドキャスト番組「TOKIO 100」。J-WAVEの週間楽曲ランキングを振り返る番組で、誰が聞いても分かりやすい。「なんだ礼央化RADIO」も、分かりやすくてぐっと引き込める、「誰が聞いても『アホだな』と思うようなもの」にしてみたいという。
ポッドキャスティングは、短ければ短いほど聞く――そんな法則も見つけた。以来、レギュラーの20分弱のコンテンツに加え、何か思い立つなりすぐに録音し、アップする数分のコンテンツ「声ブログ」も始めた。
「ポッドキャスティングが聞きたくなるような生放送を作ってみたい」。ラジオ局のポッドキャスティングは、生放送を聞かせるための“おまけ”的な色合いが強い。これを逆転させてみたいという。ポッドキャスティングを聞かせるために、ストリーミングも活用したいし、地上波のラジオ番組も持ちたい。
マニュアルが苦手で、何でも自分なりのやり方を考え抜くタイプ。だからこそ、ポッドキャスティングという新しい文化にチャレンジするのが楽しいし、すべてを賭けてみたいと思う。「大変だけど、ゼロから生まれるのがいい」
孤独な出産ではない。ライブストリーミングのリスナーに意見を聞き、ダメ出しをもらい、一緒に作っていく。「全員にプロデューサーになってもらって、みんなで考えたい」。作り手も聞き手も幸せになれるコンテンツを、みんなで生むこと。それが新しいムーブメントにつながると信じている。
――ポッドキャスティングがどうなれば、『成功した』と言えると思いますか?
記者がこう訊ねると、礼央さんは少し考え、こう言った。「それが新しいことじゃなくなった時、でしょうね。音楽と同じように、電車の中で聞いている人がいて、はやりもすたりもなく、スタンダードになること」
伝えたいのは楽曲だけど……
「自分の楽曲をどう伝えるかに命を賭けてます。それを一番表現できるぼくでありたい」――彼が最も発信したいのは、彼が信じる音楽だ。しかし、ストリーミングもポッドキャスティングも、かけられる楽曲に制限がある。
この状況も前向きにとらえたいと、礼央さんは言う。「僕という人間に興味を持っていただけるきっかけになればいいと思います。ネットラジオを聞いて『こいつの信じている音楽を聞いてやろうかな』と思ってくれると嬉しい」
自分という人間や価値観を一方的に押し付けるのは、得意ではない。「聞いている人のために、自分が存在したい。ぼくの行動は、自分ができる・できないじゃなくて、聞いてる人にとって“おいしい”か“おいしくない”かで決まります。全員にハッピーになってもらいたいから」
特集「RAG FAIR土屋礼央に聞く」は、2日連続、3回連載でお届けします
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