「デジタルライフスタイルは大学から」──MS、産学連携を強化
「大学はイノベーションの宝庫」──MSは国内大学との産学連携を強化する。共同研究プロジェクトを拡大して公募するほか、バルマーCEOも参加する大学CIOフォーラムを開く。
マイクロソフトは11月7日、国内の大学との産学連携を強化すると発表した。6月にビル・ゲイツ会長の来日に合わせて設立を発表した産学連携組織による共同プロジェクトを拡大するほか、今月中旬にはスティーブ・バルマーCEOと大学の情報化担当幹部が参加するフォーラムを開く。
7月に設立した「マイクロソフト産学連携研究機構」(IJARC)の共同研究プロジェクトは、2006年度分として「人とコンピュータのインタラクション」をテーマに、自然言語処理によるデータマイニングを研究する辻井潤一・東京大学大学院情報学環教授ら3人による3分野で進んでいる。
2007年度は範囲を拡大し、「人とコンピュータのインタラクション」(検索)、「先端的ソフトウェア技術」(セキュリティ、HPCなど)の2テーマ5分野を追加。合計8分野について11月15日から公募する。12月20日に締め切り、3月上旬に選定プロジェクトを発表する予定だ。
IJARCは、米Microsoftの基礎研究部門・Microsoft Research(MSR)と国内大学との連携を強化する推進組織。ゲイツ会長が6月下旬に来日した際に設立を発表し、「技術革新の窓を提供する」と産学連携を強化する姿勢を強調していた。
この日都内で会見したMicrosoftのリック・ラシッドMSR担当上級副社長は「IJARCは、日本の大学や研究者と最先端の共同研究を実施していくというMicrosoftの公約を形にしたものだ」と話した。マイクロソフトのダレン・ヒューストン社長は「デジタルライフスタイルは大学から始まる。大学はイノベーションの宝庫であり、日本の優秀な大学と手を結ばなければ、われわれは重要な機会を逃すだろう」と述べ、産学連携の強化は同社にとってもビジネスチャンスの拡大につながるメリットがあることを説明した。
IJARCでディレクターを務める池内克史東京大学大学院情報学環教授は「計算機科学では人と人とのつながりでソフトを共有していくことでそのソフトの良さが世界に広がっていく面がある。日本は世界から切り離されている感があるのは否めないが、MSRとの共同研究を通じて日本のソフトウェアを世界に発信できれば」と期待を込めた。
バルマーCEOの来日に合わせ、11月18日には「大学CIOフォーラム」を都内で開く。バルマーCEOと国立・私立計8大学の情報化推進担当トップが参加し、ITによる大学の競争力強化などを議論する。さらに研究会を設け、来年5月には大学のITガバナンスについて提言をまとめる予定だ。
「P検」初のMS公式テキストも
同社は人材育成にも力を入れていく。Microsoft Resarch Asiaへの派遣などを行うフェローシップを、本年度は東大と早稲田大学の大学院生計4人に授与。次期統合開発環境「Visual Studio 2005」を学生向けに入手しやすくするキャンペーンやVisual BasicとVisual C#を学習できるコンテンツのネット公開などを予定するほか、国立大教育学部向けIT研修支援や、中高生ら年間10万人が受検する「パソコン検定試験」向けに初の公式テキスト制作なども行う。
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