小中高のIT教育、まず先生から
「2005年度までに、すべての小中高等学校の授業でコンピュータを活用できる環境を整備する」――政府の「e-Japan戦略」の目標のひとつだ。
ハード面の設備は整ってきている。昨年度末時点で、1校あたりのPC平均台数は小学校で24台、中学校では41台、高校では94台。普通教室へのプロジェクター設置も進んでいる。
しかしPCを活用して授業できる先生はまだ少なく、せっかくのハードを活かし切れない。e-Japanのもう一つの目標、「2005年度までに、すべての小中学校の教師がITを使って授業できるようになる」の達成には遠いようだ。
文部科学省の統計では、コンピュータを使って教科指導ができると答えた教師は、小学校で66%、中学校で46%、高校で38%。だが「実際はもっと少ないだろうというのが私たちの実感」と、ICT教育推進プログラム協議会の吉田由加利さんは言う。
同協議会は教育現場へのIT普及を目指し、昨年11月に設立。ICTは「Information and Communication Technology」の略。小学校や高校の教師、教育委員会職員などで構成し、マイクロソフトなどが協力している。吉田さんは、マイクロソフトの法務・政策企画統括本部政策企画本部事業開発部のプログラムコーディネーターでもある。
教師のITスキルを上げる取り組み
2001年度の調査によると、教師の平均年齢は41-43歳で、高齢化が進んでいる。「年配の先生にはPCアレルギーの方も多く、若い先生にPCを教わるのを嫌がる人もいる」(吉田氏)。
PCを使いこなせない教師のために、同協議会は5月から、無料のITスキルアップ講座を始めた(関連記事参照)。校務や授業にITを取り入れられるようにするのが目的で、自治体ごとに開く集合研修でPCの使い方などを学ぶ。
教科書は現職教師らが作成。ITを授業に取り入れることのメリットから、PCなどIT機器の使い方、指導方法までを初歩から解説している。ただ技術を紹介するのではなく、実際の授業でどう活かすかを詳述しているのが特徴だ。
例えば授業で役立ちそうな画像をインターネットで収集し、プロジェクターで生徒に見せて、生徒の注意を授業に惹きつける例を紹介したり、授業導入時の“問いかけ”のスライドをPowerPointで作る方法を解説するなど、授業の流れに沿った実践的な内容になっている。
「授業でのIT活用法を解説する本はほとんどなく、多くの先生はビジネス向けのPCマニュアル本に頼らざるをえない。しかし内容が授業や校務とはかけ離れているため、挫折する先生も多い」(ICT事務局員でマイクロソフトの法務・政策企画統括本部政策企画本部事業開発部の熊野和久部長)。
同教科書では授業に沿ったITの使い方を学べるため、受講した教員からの評判は高いという。同協議会の研修に参加すれば入手できるが、一般販売はしていない。
PCが得意な教員への負担集中の解消にも
「PCが得意な教員は各校に数人しかおらず、負担が大きい」(吉田さん)。“たまたま詳しかった”だけでPC関連機器の整備まで任される。不具合や故障時には頼られ、自分の仕事時間を削られるケースもある。「学校のIT担当教員になるのは“はずれくじ”を引いたと捉えられ、なり手がなかなかいない」(吉田さん)。
全教員がPCをある程度使いこなせるようになれば、こういった現状も解消するだろうと同協議会では期待している。
ITスキルアップ講座も、講座を受けた少数の教員だけに負担が集中することを避けるため、各学校からできるだけ多くの教員が参加することを推奨している。「講座に参加した教員に、学校の“ITリーダー”になってもらい、校内の全教員のレベルを引き上げてもらいたい」(熊野部長)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
大阪公立大、システム障害で1週間近く休講に 出願期間中で入試にも影響
-
2
個人向けGeminiのモデル選択が厳格化 無料ユーザーが使えるのは「Flash-Lite」のみに
-
3
大和証券、22万件情報漏えいか 顧客約11万人の口座番号も
-
4
「Androidのマイナンバーカード」提供へ 20日から 物理カードなしでも本人確認など可能に
-
5
日経社員のGoogle Workspaceに不正ログイン 1646人分の個人情報漏えいか
-
6
パチンコ店の入場抽選アプリ「777CON-PASS」に不正アクセス 行動エリアやプロフ写真など流出か
-
7
「OpenAIの文化は壊れている」──安全性報告書を統括した従業員が退社し、寄稿
-
8
渋谷区でシステム障害、窓口業務を縮小 復旧の見通し立たず
-
9
タイムズカー漏えいで集団訴訟の動き、登録3000人弱 呼び掛けた弁護士に聞いた──「謝罪で済む案件ではない」
-
10
日本交通、不正アクセスで停止していた「電話でタクシー配車」再開へ 約3カ月ぶり
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR