TBS井上社長「楽天以外のIT企業とも等距離で付き合う」
TBSは、楽天と業務・資本提携に関する交渉を始めることを決めたが、他のIT企業とも等距離で付き合っていく方針だ。
東京放送(TBS)は11月30日、楽天との業務・資本提携に向けた交渉を始めると発表した。同社の井上弘社長は「TBSのIT戦略の基本は、提携相手を1社にしぼらないこと」とし、楽天以外のIT企業とも等距離で付き合っていく方針を改めて示した。
TBSは同日、楽天が提案していた両社の経営統合案の拒否を楽天に伝える予定だった。しかし楽天から経営統合案撤回の申し入れを受けたため、みずほコーポレート銀行の仲介のもと、業務・資本提携に向けた交渉に入ることに決めた。
提携交渉は、両社役員などから成る「業務提携委員会」で行う。業務提携の内容は、テレビ番組と連動したECの展開や、番組のネット配信、ポータルサイトを活用した新サービスなどを検討するという。「どういうジャンルがビジネスモデルとして成立するか、両社で話し合っていきたい」
TBSは、Amazon.co.jpと連動した地上デジタルテレビ向けネット通販を発表するなど、他社と連携したネット事業を始めている。楽天との提携は、こういった既存の提携事業を保てる形にする方針だ。「各社と等距離で付き合っていく。とはいえ楽天は大株主なため、気になる大事な提携先」
井上社長は「TBSはIT事業で先端を走っていると自負している」とし、BSデジタル放送の双方向通信事業などを手がける「トマデジ」を例として挙げた。ただ「トマデジも黒字化したのは5年目の昨年から。テレビとITの相性は悪くないが、商売は難しい」とし「楽天から前回もらった提案には真新しいものはなかった」と、ネットビジネスに厳しい視線を向けた。
株式保有問題で「緊張感は残る」
資本提携についても今後協議する。当面は、楽天がTBS株を保有し続けるため「緊張感は残る」とし、「経営統合をやめるなら、(楽天が保有しているTBSの)株もみんななくしてと言いたいところだが」と井上社長はこぼす。資本提携も業務提携と同様「他の企業を排除するような形になる可能性は薄い」とした。
井上社長は会見で「楽天と信頼関係を築きたい」と繰り返した。同日、50日ぶりに顔を合わせたという楽天の三木谷浩史社長も丁寧な物腰で「これからは信頼関係を崩さずにやっていきたい」と話したといい、井上社長は「友好的な印象だった」とコメント。「真しに話し合えばお互いにとってプラスの結果が出る」とした。
井上社長は「時間をかけて提携を話し合いたい」とし、交渉期間も6カ月ほど欲しかったというが、楽天の意向で来年3月までの約4カ月(延長可)に決まったという。
球団の2重保有問題については「野球協約を遵守する。球団株式の2重保有はしないというスタンスは変わらない」とした。
今回の騒動の反省点を問われた井上社長は「従来の日本企業は安定持続型成長が基本だったが、今は会社の企業価値の向上にどん欲であるべきだった」と話した。
楽天は同日、TBSが会見を行った隣のホテルで1時間後に会見した。楽天と別々に会見したことについては「今日の会見は定例会見で、たまたま楽天に回答する日と重なっただけ。提携協議はこれから始めるところで、両社で何か合意があったわけではないため」と説明した。
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