“みんなの世界的スパコン”「TSUBAME」
世界7位にランクインした東工大のスーパーコンピュータ「TSUBAME」が披露された。学部生でも使える「みんなのスパコン」として、次世代の計算科学者を育てる。
東京工業大学のスーパーコンピュータ「TSUBAME」が7月3日、同大大岡山キャンパス(東京都目黒区)で披露された。現時点で世界7位の高性能マシンだが、新入生でも使える「みんなのスパコン」がコンセプト。同大は「スーパーコンピュータの新しい利用モデルを確立したい」と期待している(関連記事参照)。
TSUBAMEは、同大が科学計算用に導入したスーパーコンピュータ。多数の汎用CPUを束ねることで超高速な計算を可能にするグリッド式を採用している。
構成は、AMDのOpteronを搭載したSun Fire×655ノード(1万480CPUコア)などによる計算クラスターと、1.1P(ペタ)バイトの大容量データストレージなど。OSはLinuxを採用。全体的な構築はNECが担当した。
ピーク性能は「PCの6万倍」(同大)という85TFLOPS。6月28日に発表されたスーパーコンピュータの性能ランキング「Top500」では、ベンチマークによる実効性能で世界7位にランクされた。「地球シミュレータ」を抜いて国内最速となり、大学が保有するマシンとしては世界トップとなった。
TSUBAMEの成果はAMDとSunにとってもHPC分野での大きな実績となった。スコット・マクニーリ会長らSunのトップも「プロジェクトに注目していた」(サン・マイクロシステムズの末岡朝彦社長)といい、日本AMDのデイビット・ユーゼ社長も「驚異的な成果だ」と喜ぶ。
TSUBAMEは同大のスーパーコンピュータとしては4台目。その名前は校章にあしらわれた鳥と同じだ。4月に稼働を開始しており、地球磁場や台風のシミュレーションなどで早速成果をあげている。
トップクラスのスーパーコンピュータを利用できる研究者は限られるのが一般的。だがTSUBAMEは「一部のグランドチャレンジアプリケーション限定ではなく、膨大な研究資源を広く活用してもらいたい」(相澤益男学長)として学生らに開放するのが特徴だ。相澤学長は「スーパーコンピュータをPCのように使いこなす計算科学者を育成したい」と話す。
プロジェクトを担当した同大学術国際情報センターの松岡聡教授によると、TSUBAMEの“寿命”は4年。政府が10PFLOPSの「汎用京速計算機」の実現を目指している2010年度には、国家プロジェクトの下支えとなる1PFLOPSの後継機を導入する計画だ。「TSUBAMEが巣立った瞬間から次の子作りを始めている」(松岡教授)。
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