Intel、進化したUMPCのプロトタイプを披露
IntelがIDFで披露したUltra-Mobile PCのプロトタイプは、スライド式キーボードを搭載し、WiMAXを内蔵する。
米Intelは、優れたモビリティを提供する「Ultra-Mobile PC」(UMPC:消費者やビジネスパーソンが電子メールをチェックしたり、ゲームを楽しんだりビデオを見たりもできる手のひらサイズのコンピュータ)を推進する姿勢を明確に打ち出している。
Intelは、2006年初めに掲げた目標を達成できると考えている。この目標は、消費電力が従来の10分の1の約1ワットでありながら、Windowsのフルバージョンを動作させることができる強力なプロセッサを投入するというものだ。
Intelは現在、消費電力が5ワットのプロセッサを持っており、2.5ワットのプロセッサを2007年に出荷する計画だと、同社のCEOは述べている。
Intel幹部は、UMPCが、モバイルコンピュータの次の大型市場になるとの見通しを持っている。
Intel幹部は9月26日、同社のMcCaslinプラットフォームをベースにしたUMPCのプロトタイプを披露した。McCaslinは、同社が省電力マシン向けに開発したチップの集合体だ。
「バッテリー駆動で1日中使える、携帯しやすく高機能なデバイスを実現できるめどが立っている」とIntelのポール・オッテリーニCEOは、サンフランシスコで開催のIntel Developer Forum(IDF)の基調講演で語った。
「こうしたデバイスは、ユーザーがWebをフルに活用できるだけの能力を備え、Windows Vistaなどのフルバージョンを動作させることができるだろう」(オッテリーニ氏)
Intelの省電力プロセッサ事業部門の責任者アナンド・チャンドラシーカ氏がオッテリーニ氏の基調講演に加わり、UMPCのプロトタイプを披露した。このプロトタイプはIntelがリファレンスデザインを開発し、台湾の大手ノートPCメーカーであるQuantaが製造した。これに近いUMPCが2007年に登場する見通しだ。
Quanta製のマシンは解像度が1024×768の5インチディスプレイとスライド式キーボードを備え、Wi-FiおよびWiMAX無線機能を内蔵している。
また、StreetDeckユーザーインタフェースも提供し、Intelが2007年前半に投入を予定するMcCaslinプラットフォームが採用されている。
このプロトタイプは、「ポケットサイズでありながら、豊富なパワーや強力な通信機能を提供する完全なPCと言える」とチャンドラシーカ氏は語った。
Intelはまた、自動車メーカーのVolkswagenが、UMPCと同社の社内エンターテインメントシステムを連携させる取り組みを進めていることも紹介した。車内で無線を利用して、UMPCに保存された音楽や映画などのコンテンツにアクセスできるようになる見込みで、IntelはQuanta製マシンを使ってそのデモを行った。また、UMPCのインターネットアクセス機能を用いて交通状況などの情報を入手するといったことも可能になりそうだ。
企業や消費者の関心の変化を背景に、このところノートPC市場は成長が加速している。米国や欧州では、消費者向けPCの販売台数の過半数をノートPCが占めているとオッテリーニ氏は述べた。
だが、無線ブロードバンドアクセスがこうしたモビリティ志向にさらに拍車をかけ、UMPCなどのデバイスに追い風をもたらす可能性がある。Intelはこうした認識から、同社のモバイルWiMAX技術によって無線ブロードバンドアクセスの普及が進めば、モバイルコンピュータ市場を拡大させる次の起爆剤になると考えている。
「モビリティの次の起爆剤は、『どこでもブロードバンド』だ」とオッテリーニ氏。「それを可能にするネットワークとフォームファクターが必要とされている」
Intelは、モバイルWiMAX(IEEE 802.16e)技術がそうしたネットワークを実現し、ノートPCやUMPCがそうしたフォームファクターを提供すると考えている。
Intelは、2006年末にノートPC用アドインカードとしてモバイルWiMAX技術の提供を開始する。2007年にこのアドインカードの増産を進め、2008年にはその機能を無線モジュールに組み込む計画だ。
「2008年には、モバイルWiMAX技術はWi-Fiとともに単一モジュールに統合され、主にノートPC用のCentrinoプロセッサプラットフォームに搭載されることになる」とオッテリーニ氏は述べた。
Intelは先ごろSprintおよびClearwireと提携しており、両社はモバイルWiMAXの採用により、ほぼ全米を網羅するネットワークを構築し、2008年までに1億人をカバーする予定だと、オッテリーニ氏は語った。
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