(2)イベント会場でマジックで塗るということ:同人誌と表現を考えるシンポジウム(5/5 ページ)
「同人誌と表現を考えるシンポジウム」で、即売会主催者、印刷所、書店の代表者が参加した第1部の後半では、実際の修正基準やトラブルなどが話題になった。女性系で修正が増えている現状なども明かされた。前回の冬コミでは男性系より多かったという。
個人が自らの責任で表現を追求できる場に
中村 やはり女性のほうがまだ慣れていない、そういう知識が少し足りないというのがあってトラブルが多いのかもしれません。
もう1つ、奥付を入れる入れないという問題があって、割と古いタイプの人間は奥付があって当たり前というところがあるんですが、最近は個人情報保護法が制定されて以降、なるべく出さないという方向に来てしまって、奥付もほとんどない、何もないみたいな状況になってきています。
例えば昔は住所を書くのが当たり前だったんですが、場合によっては女性宛てに嫌がらせの手紙が来るだけじゃなくて、それこそストーカーみたいなのがやってきたりといった危険がリアルにあったりするので住所を書けなくなったというのが現実問題かもしれませんが、やはりせめてホームページやメールのアドレスだとか、何らかの表示、連絡を取れる手段は入れて、責任は私にありますというのを表示するのは必要なのではと思うんですが、奥付が減っていることについてはどうですか。
武川 やはりURLだけって場合が多くなってますよね。
市川 URLもない。一番困るのは、ほんとに何もない場合なんですよ。僕らからしてみてほんとは全部あるのがいいんですけど、最低限、サークル名、メールアドレスというのを入れてもらって連絡できる状態にしてもらい、あと発行日。この3つくらいはほしいなあと思うんですよ。きょうはサークルさんがいっぱいいらっしゃるので、この先考えてもらいたい部分でもあるんですけど。印刷所で、入ってなかった時に「どうですかね、入れませんかね」とかってないんですか。
武川 それなりにチェックはしてますけど、徹底してない部分はあるかもしれない。
どうでもいい話かもしれないんですけど、最近、URLの時代になってから、印刷所名が入らないんですよね(会場笑い)。なぜかっていうとデザイン的に、みんな英語で済んじゃうから、そこに漢字が入ったりすると違和感があるらしくて。私はやっぱり印刷所名はちゃんと入れてよと思ってますけど(会場笑い)。
市川 そこで「グリーンなんちゃら」とかって名前を変えて(会場笑い)。
中村 もちろん印刷する立場からすれば、自分の仕事を見てほしいというのもありますし、刷った責任というのもあるんで、奥付に印刷屋さんを入れるのも1つの方向だと思います。
ということで、それぞれの立場でそれぞれが時間をかけ、コンセンサスを作りながらやってきている状況だと思います。ただ、例えば印刷屋さんの話にあったように、新規参入が増えている。同人という世界は、コミケットのスタートからすれば三十数年ですかね、常に新しい層が毎年毎年入ってきている形で拡大して、一時期は爆発的に拡大したりもしたので、これまでの経験の蓄積がちゃんと伝えられていないのではないかという反省もあります。今回のシンポもそうですが、結局、同人誌というのは個人活動が基本だったりしますので、個人同士のつながりの中でそういうことを伝えていかなければならないのではないかというようなことを考えていきたいと思います。
シンポジウムは「研究会」で同人誌がやり玉に挙がったのがきっかけではありますが、やはり警察は自主規制を作ってくれだとか、作れば安心するという部分もありますが、それができることによって何かしら縛りを作ってしまう形になってしまうと、それは同人誌には似つかわしくないのではないかと。できるだけ、個人が自分の責任において、自分の表現を追求していくという場でありたいと思いますので、相互に連絡を取り合いながら、今後もこういった話し合いを続けていきたいと思います。
(第1部おわり)
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