「Winnyでいいから読んでほしい」? 現役世代の本音と著作権保護期間問題
著作権保護期間をめぐる議論が活発だが、現役クリエイターはこの問題についてあまり発言していない。第一線で活躍する彼らの本音は、どこにあるのだろうか。
著作権保護期間を作者の死後50年のままにすべきか、70年に延ばすべきか――こんな議論が昨年から盛り上がっている。著作権管理団体など権利者側は「保護期間が長い方が創作意欲が高まる」「世界標準に合わせるべき」と延長を主張。これに対し、著作物の利用者側を中心に「延長すると2次利用時の手間が増えるだけで、文化の発展にもマイナス」などと反対の声が上がっている。
この問題について専門に考えるフォーラムも設立され、昨年からシンポジウムを開いて活発に議論している。ただこの議論には、最も重要なプレイヤーがあまり参加していない。現役の若い世代のクリエイターたちだ。
クリエイター側としては、漫画家の松本零士氏(関連記事参照)や、作家の三田誠広氏(関連記事参照)が延長賛成派として参加しているが、若い世代の漫画家やアニメクリエイター、小説家などは見当たらない。保護期間延長で創作意欲が向上するかどうかは、クリエイター本人に聞いてみないと分からないはずなのだが――
若いクリエイター自身がブログなどでこの問題について発言しているケースもそう多くなく、彼らの声はなかなか聞こえてこない。創造の最前線で活躍している彼らの思いはどんなところにあるのか。
ある大手出版社の編集者はこう見る。「日本に漫画家は4300人くらいいるらしい。だがその中で、作品が売れて2次利用されるなど、著作権を考慮するような立場の人は200人いるかいないかだろう」。さらに「保護期間の延長を口に出して恥ずかしくない作家など、ほんの数人でしょう」
編集者はこうも言う。「わたしが普段付き合いのある作家はみんな、『Winnyでもいいから読んでもらえるほうがうれしい』という人ばかりです」
クリエイターが「保護期間を延長してほしい」と訴えることはすなわち、自分が死んでから50年後以降もコンテンツの価値が残ると確信している、ということになる。
現役世代はこの問題について語りたがらない。「口に出すと恥ずかしい」上、いま広く誰かに読んでほしいと思って身を削る漫画家の創作活動には、必ずしも関係がない。死して名を残す優れた作品を世に放つ意志と、死後の著作権が20年伸びること──イコールで結ぶには何か微妙なズレがあるようだ。
著作権保護期間をどうすれば、クリエイターがやる気になり、文化の発展につながるのか――現役クリエイターを交えた議論が今後、必要になってきそうだ。
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