米IBMは少量の水で冷却効果を大きく改善したい考えだ。
同社は4月8日、サンフランシスコで開催したイベントで、空冷式ではなく水冷式の冷却装置を採用した最新のスーパーコンピュータ「Power 575」を発表した。Power 575は1台のラックにIBMの4.7GHzのPower6プロセッサコアを最大448個搭載できるようになっており、IBMはこのシステムのために新しい冷却方法を見つける必要があった。
そこでIBMのエンジニアはPower 575の冷却には空気を使うのではなく、システム内に冷却水を循環させることでプロセッサを冷却する方法を採用した。Power 575はグリッドオーバーレイで構成され、各プロセッサの上部には水で冷却された銅板が配置されている。この冷却システムによって熱を吸収し、ラックから水と熱を排出するという方法だ。
IBMによると、従来の空冷式のPowerシステムと比べて、水冷式のPower 575はデータセンター内の電力消費量を40%削減できるという。Clabby Analyticsのアナリスト、ジョー・クラビー氏も、システム単体やデータセンター全体を冷却する場合、水冷式は空冷式と比べて3倍効率的に熱を排除できると指摘している。
「4.7GHzのクロック速度ともなれば、プロセッサは非常に高速に稼働するため、ただ空気を吹き付けるだけでは冷却は不十分だ。そこで水冷式のソリューションが役立つ」と同氏。
またクラビー氏によると、最近データセンターの冷却をめぐっては、空気の代わりに水などの液体を使って熱を排除し、電力コストを削減する方法を開拓する専門家やサーバベンダーが増えているという。
IBMは声明で、Power 575スーパーコンピュータの冷却システムはいずれ、プロセッサ本体に水冷システムを組み込む形の新たな冷却方法を切り開くことになるだろうと指摘している。熱をいったん取り込めば、システムから排出した水は再利用できる。
なおIBMはPower 575システムにおいて、冷却システムのほかにも幾つか改善を施している。Power 575は同社の高性能コンピューティング部門にとって重要な位置付けの製品だ。
IBMは現在、米エネルギー省のローレンスリバモア研究所に設置してあるBlue Gene/LシステムでスーパーコンピュータのTop 500リストの第1位にランクインしている。
このBlue Gene/Lシステムの現行版は478.2テラFLOPS(テラFLOPS:1秒間に1兆回の浮動小数点演算処理)のパフォーマンスを実行できる。
一方、Power 575システムでは32個のPower6プロセッサコアを収容する2U(3.75インチ)のノードを14台まで拡張でき、プロセッサコアはそれぞれ4.7GHzで動作し、各ノードは600ギガFLOPS(ギガFLOPS:1秒間に10億回の浮動小数点演算処理)を実現する。また各ラックには最大で3.5Tバイトのメモリを搭載できる。
IBMはPower 575にAIXかLinux、いずれかのOSを搭載して販売する計画だ(AIXはIBMのUNIX OS)。Power 575のリリースは5月に予定されている。
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1位は前回に続きIBMのBlueGene/Lで、LINPACKベンチマークスコアを478.2TFLOPSに大幅アップ。東工大のTSUBAMEは16位だった。
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