東芝、Cell搭載テレビを09年秋に発売 「超解像」技術も積極展開
東芝は、Cellを搭載した液晶テレビを09年秋に発売する計画を明らかにした。SD以下の映像を高解像度化する「超解像」技術を搭載した製品も順次投入する方針。
東芝の西田厚聰社長は5月8日、Cellプロセッサを搭載した液晶テレビを2009年秋に発売する計画を明らかにした。同プロセッサのマルチメディア処理能力を生かし、「テレビの新しい楽しみ方」を提案する新機能を搭載するという。
同社はCellプロセッサの生産設備をソニーから買収。現在は「PlayStation 3」での利用がほとんどの同プロセッサを、デジタル家電の差異化に活用する。既にCellの技術を活用したメディアストリーミングプロセッサ「SpursEngine」のサンプル出荷も始めており、同チップを搭載したAV重視型PC「Qosmio」も発売する計画だ。
Cell搭載テレビは「オペラグラス機能」「マルチ同時録画・再生機能」「自動シーン検出」などの機能を搭載するという。
「超解像」を展開へ
映像事業とPC事業、HDD事業を含む「デジタルプロダクツ事業グループ」の商品戦略の1つは、東芝が実績を持つ画像技術を活用した「高画質化」だ。
その武器は「超解像機能」。超解像とは、低解像度の画像から高解像度の画像を生成する技術のことで、東芝は「標準画質以下のデジタルコンテンツも端末側で簡単に高画質に変換」するという機能を搭載した新製品を投入していく計画だ。インターネット動画やIPテレビの普及に加え、現行DVDの膨大な資産を高画質化して楽しみたいニーズに対応するといい、同機能を搭載したテレビ、PC、DVDプレーヤーを展開していく。
同社は昨年10月のCEATECで、SpursEngineと独自アルゴリズムによる超解像技術のデモを披露している。
西田社長は「HD DVD終息の1年前から(超解像技術を搭載する)半導体の開発を始めていた。今後も現行フォーマットでソフトが出続けるだろう。高い次世代機を買わなくても、新機能により相当いい画質で見られる」と話し、HD DVDで見込んでいた売上高のかなりの部分はカバーできるという見通しを示した。
テレビ事業は「十分やっていける」
デジタルプロダクツ事業グループの2007年度売上高は2兆9500億円。これを2010年度には4兆1000億円に拡大させる。PC事業は07年度に売上高が1兆円を突破。新興国市場での販売を強化し、10年度には1兆7000億円にまで伸ばす目標を掲げる。
テレビ事業は07年度売上高の4800億円を、10年度に7500億円にまで拡大する計画。世界的な競争の激化と価格下落など、厳しい環境が続く同事業だが、西田社長は「テレビは確かに大変だが、社長就任時はPCもやめたらという意見を頂いていた。PC事業でサプライチェーンなどのノウハウを当社は持っている。テレビはPCのようにコモディティー化しており、ビジネスモデルがPCに似通ってきた。他社より優れていると自負している画像技術に加え、ビジネスモデルのノウハウも持っており、十分やっていける」と話した。
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