「ダビング10」延期問題、「メーカーの主張が分からない」とJASRAC菅原常務理事
「みんながそれぞれ少しずつ不満を残しながらも、コンセンサスを得ようとしていたのに」――JASRACの菅原常務理事は「ダビング10」や「私的録音録画補償金」をめぐるメーカー側の対応に不満を漏らした。
「みんながそれぞれ少しずつ不満を残しながらも、コンセンサスを得ようとしていたのに」――日本音楽著作権協会(JASRAC)の菅原瑞夫常務理事は5月14日の定例会見で、「ダビング10」や「私的録音録画補償金」をめぐるメーカー側の対応に不満を漏らした。
ダビング10と補償金については、JASRACなど著作権者団体などが「ダビング10対応機器が補償金の課金対象とならない限り受け入れられない」と主張してきた(関連記事:「JEITAの対応、憤り禁じ得ない」と権利者団体 私的録音録画補償金問題で)。
これに対して電子情報技術産業協会(JEITA)などメーカー側の団体は、「ダビング10」を含むDRMがかかったコンテンツは、補償金の対象から除外すべきと求めてきていた(関連記事:「DRMあれば録音録画補償金は不要では」――JEITAが立場を説明)。両者の意見は折り合わず、6月2日を予定していたダビング10のスタートは難しい情勢になっている。
菅原常務理事は5月8日に開かれた文化審議会著作権分科会小委員会(文化庁長官の諮問機関)の会合を振り返り、「補償金制度については、利用者代表からも文化庁案(ダビング10対応機器やiPodも課金対象に加える)でやむを得ないという意見が出ており、中立的な立場の学者もその方向で話をまとめるべきとしていた。残っているのはメーカーさんだけだ」と述べた。
メーカー側が、ダビング10の開始と補償金制度の縮小をセットで主張していることも理解できないと話す。「ダビング10と補償金はそもそも、まったく別の話。ダビング10はコピーワンスへの利用者側の不満から出た制度だ。権利者への適正な対価の支払いを前提としていたことは、メーカーも確認したはずだ。それなのになぜ、ダビング10と補償金を合わせて主張するのか分からない」
「補償金については4年も議論してきた。やっと方向性が示され、みんながそれぞれ少しずつ不満を残しながらも、コンセンサスを得ようとしていたのに。新制度を早く整備すべきだろう」
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