Tablet PCで授業はどう変わる? 和歌山の小学校の取り組み
和歌山市内の小学校で、Tablet PCを使った授業が行われている。PCをノート代わりに使い、問題を解く過程などを保存。どこでつまずいているかが分かりやすく、指導に役立つという。
和歌山市立有功(いさお)東小学校で、Tablet PCを使った授業が昨年10月に始まった。児童がPCをノート代わりに使い、問題を解く過程などが保存されるため、教師がチェックした際にどこでつまずいているかが分かりやすく、指導に役立つという。
マイクロソフトとメディア教育開発センターが2006年に始めた「NEXTプロジェクト」の一環。教育機関で、PCや学習ソフトなどのIT製品を活用することで、学力向上や校務の効率化が図れるかを研究している。教育機関向けソリューションの開発につなげるのが狙いだ。
和歌山市は昨年10月から同プロジェクトに参加。有功東小学校など市内の52の小学校にTablet PCを計1300台導入し、授業に活用している。和歌山市以外にも、港区立青山小学校(東京都)や立命館小学校(京都府)、海陽学園(愛知県)などがプロジェクトに参加している。
Tablet PC活用で「子どもが本当に作りたかったノートを作れる」
有功東小学校では授業で児童にTablet PCを1台ずつ配り、「OneNote」をノート代わりに使ったり、漢字練習ソフトで漢字の筆順を学ぶ――といったことを実践している。解答用紙のファイルを複数の児童で共有し、回答をほかの児童に見せ合うなど、グループ学習にも役立てられている。
児童が問題を解いた過程を保存しておき、先生が後から確認して指導するといったことも可能だ。小学校6年生を担当している本岡朋教諭は「履歴をたどることで、児童は気付きを深められる。教師は、児童1人1人がどこでつまづいているかをつかみやすい」と話す。
さまざまな色を使って文字を書き込んだり、日付やキーワードで自分のノートを検索することも可能。「ITを活用することで、子どもが本当に作りたかったノートを作ることができる」(本岡教諭)
マイクロソフトの大井川和彦常務は「新しい教育手法を開発していこうというのがNEXTプロジェクトの目的。現場の教師からはITを活用する効果が分からないといった声が聞かれる。これからも実証事例を増やしていきたい」と話す。
「授業でのICT活用は効果ある」97%
メディア教育開発センターなどがこのほど発表した「ICT活用による学力向上に関する総合的分析評価」の調査結果によると、教師の97.3%が「ICTを活用して授業を行うと、学力向上に効果があった」と答えた。
05〜06年に、PCやプレゼンテーション用ソフトなどICTを授業で活用している小中高の教師357人を対象に調査した。
ICTを授業で活用したことによって、児童・生徒の態度・関心・意欲が向上すると答えたのは98%。知識・理解が深まると答えたのは95.5%だった。
授業後にテストを行ったところ、ICTを活用した授業の方が、活用していない授業よりも点数が高かった。小学校の算数のテストでは、ICTを活用した場合の平均点が82.1点で、活用していない場合よりも5.9点高かった。
メディア教育開発センターの清水康敬センター長は「ICTは学力向上に効果がある。教師の実感だけでなく、テストの結果も出ている。今後はICTを活用する教師の指導力を向上させることが重要だ」と話した。
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