ADSL事業統合へ提携 イー・アクセス、アッカを子会社化
イー・アクセスがアッカを子会社化し、ADSL事業統合に向けて提携する。ADSL市場シェア拡大による効率化・スケールメリットを生かすほか、モバイルと連携させたFMCサービスにつなげていく。
イー・アクセスは7月31日、アッカ・ネットワークスを連結子会社化すると発表した。ADSL関連設備と業務を統合し、両社合計のADSL市場シェアはソフトバンクBBに次ぐ2位になる。ADSLホールセール(回線卸)の同業として競争してきた両社だが、それぞれワイヤレスブロードバンドサービスに事業の軸足を移しつつあり、今後、両社でADSL事業の統合に向けて効率化を進めるほか、ADSLとモバイルを連携させたFMCサービスにつなげていく狙いだ。
アッカが8月15日払い込みで実施する総額74億1400万円の第三者割当増資をイー・アクセスが引き受ける。イー・アクセスの議決権比率を現在の14.9%から45.32%に引き上げて連結子会社化。取締役はイー・アクセスが過半数を派遣する予定だが、須山勇社長ら現経営陣は変わらない。アッカのJASDAQ上場は維持し、社名やブランドも変えないとしている。
将来のADSL事業統合に向け、業務提携も進める。イー・アクセスは、DSLAMなどの関連機器をアッカに約33億円で売却。保守業務もアッカに統合し、イー・アクセスはアッカに設備使用料を支払う形とすることで、効率化に加え、アッカの収入増にもつなげる。
アッカのネットワーク運用業務は、イー・アクセス傘下のイー・モバイルに統合。イー・アクセスは既にイー・モバイルに運用業務を委託しており、統合効果を高める。モデム関連業務や顧客サポート業務も両社で統合する。
提携効果で、今後5年間でアッカの売上高として140億円の増収を見込むほか、コスト削減としてアッカで約60億円、イー・アクセスで約10億円を見込む。
アッカは2008年12月期の連結業績予想を修正。営業利益は従来予想から1億円増の20億円、純利益は3億円増の17億円になる見込み。大型エクイティファイナンスで株式の希薄化が生じるが、提携効果により「来期のEPS(1株当たり純利益)が落ちるようなことはない」(須山社長)としている。
アッカ株式の12.9%を保有する第2位株主のNTTコミュニケーションズは同日、第3位株主の投資ファンド、イグナイトに全株式を売却することで合意したと発表した。
ADSL市場シェア30%目指す
イー・アクセスはアッカの筆頭株主。経営方針をめぐって両社で対立した経緯もあるが、今年3月に就任したアッカの須山社長は無線ブロードバンドへの本格参入を打ち出し、イー・モバイルの回線を借りるMVNO方式のデータ通信サービスを6月に開始。須山社長からイー・アクセスにADSL事業の効率化について話を持ちかけ、約2カ月にわたって検討を重ね、提携に至ったという。
須山社長は「真摯(しんし)に検討を重ねた結果、Win-Winで合理的なスキームができた。DSL事業の効率化に加え、新成長分野の無線ブロードバンドに大きく寄与する提携だ」と説明。「これはファーストステップに過ぎない」として今後も関係を深めていく姿勢を強調した。
イー・アクセスの深田浩仁社長は「両社ともDSLホールセール事業者であり、提携効果を最も出しやすい。市場シェアの拡大によるスケールメリットを最大限生かしていく」と期待する。シェアはイー・アクセス(14.6%)とアッカ(7.5%)の合計で約22%になり、ソフトバンクBB(37.8%)に次ぐ業界2位に。深田社長は「DSL市場は1000万回線規模で必ず残る」とみて、2010年ごろまでにシェアを30%にまで引き上げたい考えだ。
アッカの経営方針を厳しく批判してきた千本倖生会長は「経営陣が刷新され、新体制の3人は明らかに戦略的で前向きな経営をしている。両社の社長同士でいい関係も築けたこともあり、当初は純投資目的だったが、戦略的な投資に変えていければと思った。NTTコミュニケーションズも理解を示してくれるようになった」と資本提携に踏み切った背景を話した。
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