携帯、大型、1億画素――3Dディスプレイ最前線:CEATEC JAPAN 2008
今年のCEATECの3Dディスプレイは、携帯電話サイズから103型まで大きさもさまざま。多数のプロジェクターを密集させ「合計1億画素以上」というシステムを使った70型もある。
CEATECでは今年も、各社が3Dディスプレイを展示している。主流は裸眼立体視できるディスプレイ。2D映像をリアルタイムで3D用に変換する携帯電話サイズのものや、多数のプロジェクターを密集させ、70型のスクリーンを背面から照らすものなど、技術もサイズもさまざまだ。
KDDIが展示しているのは、裸眼立体視できる携帯電話サイズの液晶ディスプレイだ。2D映像を、右目用と左目用の映像にリアルタイムに変換。ストライプ状に並べて表示し、立体的に見せているという。
画面は携帯電話サイズ。携帯電話に搭載し、ワンセグ映像や、コンテンツ配信サービス「LISMO」の動画を3D表示したり、携帯で撮影した動画をリアルタイムに3D化する――といった使い道を想定している。実用化の時期は未定という。
日本ビクターのブースでも、2D映像を3D用にリアルタイム変換して表示する液晶ディスプレイが展示されている。立体視するには専用めがねが必要だ。(「今年こそ“飛び出すテレビ”元年に」 ビクター、2D映像を3D化する技術)。
1億画素の「プロジェクタアレイ」で70インチの大画面
70型と大型の裸眼立体視ディスプレイを展示しているのは情報通信研究機構(NICT)だ。ビクターと共同で開発したもので、スクリーンの両端までならどこからでも、HD画質の3D映像が見られるという。
HD画質のプロジェクターを密集させた「プロジェクタアレイ」で、スクリーンを後ろから照らしている。アレイを構成するプロジェクターの台数は非公開だが、「2ケタ台」(説明員)で、合計画素数は1億を超えるという。
プロジェクターやスクリーンの光学系を細かく制御し、立体的に見せている。人間は、物に当たった光の反射を目でとらえて立体感を得ているが、このシステムでは、物に当たった光がスクリーンから反射しているように見せかけることで立体感を出しているという。
高画素な立体画像をさまざまな視点から見られるのが売り。デモでは真っ暗なブースで自動車のCG映像を再生しており、裸眼で立体的に、はっきりと見えた。
自動車や家電などの工業デザイン用や、博物館での体験学習用、遠隔地でのコミュニケーションツールとしての利用を期待。今後は200〜300型相当のディスプレイにも対応できるよう改良を進める。
大画面でHD画質の3Dとしては、パナソニックが103型プラズマテレビで、専用めがねを使って3D映像を視聴できる「3DフルHDプラズマ・シアターシステム」を展示しており、ブースには長い列ができていた。
宙に浮かんでいる映像に手を差し出すと…
パイオニアはインタラクティブな裸眼立体視ディスプレイ「3Dフローティングビジョン」を展示。映像が空中に浮かんで見えるというもので、浮かんでいる風船の映像に指を差し出すと風船が割れる、というデモを体験できる。
液晶ディスプレイに、小さな凸レンズを密集させた特殊なパネルを重ねることで、映像を浮かび上がって見える。さらに空間センサーと組み合わせることで、指を感知すると風船が割れた映像を表示する――という仕組みが完成する。
CDジャケットが浮かび上がったディスプレイの前で、映像に向かって携帯電話を差し出して動かすと、携帯に着メロがダウンロードされるというデモもあった。
3Dフローティングビジョンは受注生産している。サイズは15型と6型の2種類。
2Dと3Dの混在映像も
NECと東芝のブースでも、裸眼立体視ディスプレイを展示している。アミューズメント分野などでの利用を想定しており、どちらもパチスロの映像を3Dで流すデモを披露していた。
NECは9型と3.1型の2種類を展示。ディスプレイの画素配列を工夫し、画質を低下させることなく3D表示できるという。同一画面上に2Dと3Dを混在させることも可能で、「文字は2Dで、強調したい画像は3Dで」といったことができる。
3.1型の画面では、2Dの「NEC」という文字の後ろに、花火の3D映像が表示されるというデモを再生していた。文字は平面に、花火は立体的に迫ってくるように見え、不思議な感覚だった。
東芝のディスプレイは、9方向から撮影した映像を見る角度に応じて表示することで、視野角が広く目が疲れにくい3D映像を再現できるという。サイズは12型。
どちらも実用化の時期は未定。東芝の説明員は「市場が見つかれば製品化したい。まずはどんな用途があるか探っていきたい」と話していた。
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