「著作権は守りから攻めにシフト」──違法動画も収益化目指すYouTube
Googleは11月25日、YouTube日本版の事業について説明した。著作権防止技術でコンテンツ企業の権利を守りつつ、コンテンツ企業がYouTubeを活用して収益化する仕組みが順調に回り始めていることを強調。「著作権は、守りから攻めへの大きなシフトが起きている」と、国内コンテンツのグローバル展開支援なども手がけていく方針を掲げた。
同社によると、YouTubeは現在1分間に約13時間分の動画がアップロードされるまでに浸透している。現在は23カ国で展開し、約7割は米国外からのアクセス。日本のユーザー数は約1980万人と、米国(7400万人)に次ぐ2番目の市場。米Googleコンテンツ担当副社長のデービット・ユン氏は「YouTubeは間違いなくグローバルブランドだ」と話す。
“違法投稿”の再生数が正規コンテンツの50倍に
コンテンツ企業からの攻撃にさらされてきたYouTubeだが、現在は「Content ID」システムを導入。ユーザーが投稿した動画の中から、コンテンツ企業が著作権を持つ動画・音声を正規コンテンツとの自動照合技術で発見し、さらに管理も可能な仕組みを導入。300以上のコンテンツ企業が導入し、「高精度に機能している」という。
同システムで“違法”動画を発見した場合、コンテンツ企業が取れる手段は──(1)ブロック(ユーザー動画は公開前に視聴不能に)、(2)トラック(ブロックはせずにトラフィック情報などを詳細に取得)、(3)マネタイズ(マッチしたユーザー動画に広告などを表示し、広告収益を受け取る)──の3つだ。
実際にコンテンツ企業が選ぶのは「90%以上がマネタイズ」(ユン氏)。人気動画の場合、コンテンツ企業が公式アップロードした動画の再生回数をユーザー動画が上回るケースが多く、あるパートナーはユーザー動画を「マネタイズ」することで、従来の50倍の再生回数と収益を上げることができたという(参考:Google公式ブログ記事)。
収益化手段として、動画の冒頭15秒にCMを挿入する「In-Video」広告も導入。CTR(Click Through Rate)が従来の広告に比べ8~10倍に上るなど、広告効果が高いという。YouTube版の“ニコニコ市場”とも言える「click-to-buy」機能は10月に導入。パートナーが動画の直下にiTunesとAmazonへのアフィリエイトリンクボタンを設置できるようにした。
今後もContent IDシステムの強化を続けるほか、キャプションの自動翻訳機能など、国内パートナーのグローバル展開への支援などを実施していく計画。ユン氏は「ネットで世界は小さくなっているが、チャンスは大きくなっている。日本からコンテンツ発信ができるようになればすばらしいこと」と話し、パートナー企業のための投資を続けていくことを約束した。
YouTubeという“黒船”とどう関係を結ぶか
事業説明会とその後のパネルディスカッションではパートナー企業の代表者らが発言。公認MADなどで既に実績を上げている角川デジックスや、10月にパートナーとなったエイベックス、YouTube対応機能を備えた「VIERA」を発表したパナソニックがYouTubeの活用例を紹介した。
エイベックスは「YouTubeからヒットを出したい。YouTubeから出たと堂々と言えるような仕掛けを作りたい」(エイベックス・マーケティングの前田治昌アーティストマーケティング本部長)と、Googleマップやストリートビューを活用したオーディション、YouTube上で「クリエイティブチーム」のメンバーを募集してアーティストを育てる──といった試みを検討している。
「なんで私がここにいるのかとお思いの方もいらっしゃるかと思いますが……」と登壇した日本音楽著作権協会(JASRAC)の菅原瑞夫常務理事。交渉に「時間がかかった」というYouTubeとの包括契約を1カ月前に結んだばかりで、動画共有サイト向けの著作権使用包括契約と許諾への考え方を説明。「違法なものへの対策は要請していく」とYouTubeに対してクギを刺しつつ、「従前の方法・メディアではない動き、新しい文化に対しJASRACも期待している」と話した。
YouTubeの活用など、新メディアへの取り組みに熱心な角川グループホールディングスの角川歴彦会長兼CEOも登場(「YouTubeは世界共通語」――角川会長の考える“次の著作権”)。「新しいものをリスクとしてのみとらえるのではなく、チャンスとしてとらえていこうと言ってきた。YouTubeはいわば『黒船』。開国時の日本と同様、どうやって新しい関係を築くべきかだ」と説いた。
また「違法アップロードより、自分で作った音楽を公開している人のほうがむしろ多いのでは。こうしたコンテンツをどうマネタイズするか、JASRACも新戦略を示してほしい」「YouTubeのおかげで成功したお金持ちが出てくると世の中変わるのでは。YouTubeにはアメリカンドリームの道筋を作ってほしい」などと注文。期待の高さを表していた。
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