「京速計算機」からNEC、日立が離脱 ベクトル・スカラー複合構成は困難に
世界最高速のスーパーコンピュータ開発を目指す国家プロジェクトから、ベクトル型を担当していたNECと日立が離脱。民間は富士通単独となり、ベクトル・スカラーの複合システムは困難になった。
理化学研究所とNECは5月13日、次世代スーパーコンピュータ開発からNECが撤退すると発表した。NECと契約して参加していた日立製作所も離脱することになり、次世代スーパーコンピュータは理研と富士通で計画を進めることになる。
理研は計画通り2012年の完成を目指して開発を続けるとしている。世界最高の計算能力を目指し、ベクトル型とスカラー型の複合システムとして設計が進んでいたが、NECの撤退でベクトル型は困難になり、富士通によるスカラー型のみとなる可能性が高い。
理研によると、次世代スーパーコンピュータは詳細設計の最終段階。今後、製造段階に進む計画だが、ベクトル型を担当するNECはこのほど、製造段階の契約に参加しない意向を伝えた。
NECは「製造フェーズに参画した場合、本体製造に関連する投資が相当額発生することが見込まれ、この費用負担が今年度の業績に多大な影響を与える規模となることが確実とみられる」と説明している。NECは今期の黒字転換を目指しており、ベクトル型専用プロセッサの製造などで必要になる多額の開発投資に耐えられないと判断したとみられる。
理研は今後、システム構成を見直し、09年度中に製造に向けた試作・評価を開始、12年の完成を目指して開発を進める方針。
次世代スーパーコンピュータは、世界最高速の奪還を目指し、1秒間に1京回(10PFLOPS)の計算が可能な「京速計算機」の開発を目指す国家プロジェクト。総事業費は約1150億円。神戸市に設置される。
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