ネットサービスにお金を払ってもらうには mixiやpixiv、はてなの“手の内”:マネタイズHacks
広告不況の中、ネットサービスで稼ぐには。ミクシィやライブドア、ピクシブ、はてななどが集まり、自社サービスのマネタイズについて話した。
不況の中で、ネットサービスの収益環境が悪化している。「ページビューさえあれば広告が入り、収益になる」という時代が終わりを告げつつある中、どう稼げばいいか――6月24日に開かれたイベント「第3回 マネタイズHacks」にピクシブやミクシィ、ライブドア、はてななどが集まり、自社サービスのマネタイズや有料課金サービスの状況について話した。
「景気低迷で広告出稿が鈍化している。新しい収益の柱が必要」と、Yahoo!JAPAN研究所の柿原正郎さんは述べる。「客が何を求めているのか、何をしたいのかとらえた上で、継続的に使ってもらえる課金のプラットフォームを設計することが重要だ」(柿原さん)
ブログ課金をさらに一歩 ライブドアの場合
広告以外のマネタイズの手法として第一に思いつくのが、月額制などの課金サービスだ。2007年9月から黒字が続いているという「livedoor Blog」は、収入の30%が月額課金の有料サービスから。アクティブ会員のうち17%が有料会員という。
「ユーザーニーズに合った機能を出し、正しくアピールすること」がキモだと、ライブドアのブログビジネスユニットの坪田朋さんは話す。ユーザーアンケートの結果などから、ニーズの高い機能を実装していく。「お金を払いたくなるサービスを作ることが重要」
課金ユーザーの決済手段は80%がクレジットカード。残りはコンビニ決済などだ。コンビニは10代、60代に多いという。10代、60代にもっとお金を使ってもらうことが課題で、10代向けには、モバイル用デザインテンプレートなど低単価、買い切り商品を訴求。60代向けにはブログの書籍化といった商品を提案していきたいという。
サーバはビックで調達 pixivの低コスト運営
「うち、全然もうかってないんで……」と話すのは、ピクシブの片桐孝憲社長だ。イラストSNS「pixiv」のユーザー数は約100万人。「ユーザー数が30万人ぐらいになるまでは、マネタイズをしていなかった」という。
ただ低コスト運営は徹底している。プログラミングはほぼ1人で担当。140台あるサーバ(半数はデータベースサーバ)はビックカメラで購入した機材で自作した。「最初はアキバで買ってたんですが、ビックの方が保証期間が長かったので」
pixivの収入源は、Amazonのアフィリエイトとオーバーチュアのコンテンツマッチ広告、月額525円の有料会員制度。今後は有料会員を伸ばしていきたいという。
「人気の機能は有料にしない方がいいと考えている。ユーザーページのレイアウトをや背景を変えたり、コミュニケーション機能を追加したりといったニッチなニーズを有料機能として提供したい」。ユーザーが作った物を販売できる環境も築いていく考えだ。
コミュニケーションに課金する mixi年賀状
コンテンツやアイテムを販売する「都度(つど)課金」の可能性はどうだろうか。ミクシィの岨中(そわなか)健太企画部長は「mixi年賀状」を例に、mixiらしい都度課金「コミュニケーション課金」のあり方を解説する。
mixi年賀状は、住所を知らないマイミクシィにも年賀状を郵送できるという「今までにないコミュニケーション」を生み出し、70万枚の申し込みがあった。
「買いやすく、面白くした」のが特徴。はがきは「当初は1枚150円を考えていたが、高いと使う人がいないと考え」、1枚48円からというリーズナブルな額に設定。400以上のデザインテンプレートを用意し、年賀状2通につき苗木1本の植樹にかかる金額を寄付するという“エコ感覚”も加えることで「使ってもらうきっかけ」を何重にも用意した。
mixiで課金企画を行う際、重視しているのは、もうかるかどうかではないという。(1)mixiでやる意味があるか、(2)ユーザーが楽しいか、(3)事業者目線になりすぎていないか――といった点。mixiにはさまざまな提案が舞い込んで来るが、特に(3)にそぐわないケースが多く、断ることも少なくないそうだ。
「mixiはECをやらないのですか? とよく聞かれる。1700万ユーザーが1000円使えばそれだけで年商20億になる。売り上げ最大化が目的ならそれでいいが、ECをやりたいならmixiではなく、もっとユーザーの多いサービスと組めばいいのでは、と思う」と岨中さんは話し、今後もmixiらしいサービスを、ユーザー目線で提供していきたいと述べた。
有料の「はてなスター」で「人が人を呼ぶ」
はてなも「はてなスター」を使ったコミュニケーション機能に課金をし、好評を得ていると、同社の川崎裕一副社長は話す。
有料のカラフルなはてなスター「カラースター」が、ニンテンドーDSiで作ったパラパラ漫画を見せ合えるサービス「うごメモシアター」を使っている子どもたちに人気。カラースターは100円(10個)〜5000円(580個)までそろえており、価格が上がれば“レアな色”が入っている確率が高まる。一番の売れ筋は500円(55個)と、子どものお小遣いで買える程度の金額だ。
うごメモシアターでは、気に入った作品に「はてなスター」を付けられるが、「珍しい色のカラースターが付くと気になるので、別の人がそのスターを付けた人のページを見に来る」(川崎さん)という流れが起きており、カラースターをハブに、「人が人を呼ぶ」仕掛けになっているそうだ。
はてなTシャツやダイアリーブックが人気
はてなはリアルなグッズ販売でも成功しているという。毎年異なるデザインで販売している「はてなTシャツ」がよく売れるほか、6月18日に50個限定で出した「はてなストラップ」も、800円とストラップとしては高額ながら、2日で完売したという。「ブランド品を持ちたいというのと似た感覚で、はてなへの愛着がある人が買ってくれている」(川崎さん)
はてなダイアリーを書籍化する「はてなダイアリーブック」も人気商品だ。「毎年、年明けから受注が増える。1人10冊はもちろん、20〜30冊の注文も珍しくない」(川崎さん)という。
モバイル課金の可能性は ウノウ「まちつく」
ウノウの山田進太郎社長は、仮想の町を育てる携帯電話向けサービス「まちつく」を例に、携帯電話でのアイテム課金について解説。「サイト内で自慢できるアバターのようなアイテムや、サイトで有利になれるアイテムが売れる」と話す。
アイテムを購入するためのポイントを販売する際には、「お金=ポイント」(100円=100ポイント)といった単純な仕組みにせず、「200円でアイテムがもらえ、200円相当のポイントももらえる」などアイテムを絡ませた方がよく売れるという。友人を招待する際のインセンティブも、ポイントよりアイテムの方が反応がいいそうだ。
サービスを開発力の宣伝に生かすカヤック
「マネタイズは作ってから考える」と話すのは、カヤックの玉田雄以さん。同社は新規サービスを大量に作り続けているベンチャーで、2007年は77、08年は88のサービスを作り、09年は99のサービスを作る予定だ。
「何が当たるか分からないから、作ったら放置して次を作る」――数を撃ち、人気の出たサービスには広告を貼ったり、有料課金サービスを導入したり、他社に売却するなどして収益化してきたという。
新サービスは直接収益にならなくても、エンジニアの技術向上につながり、話題になるような面白いサービスならカヤックの知名度向上に寄与する。カヤックの知名度が向上すれば、受託開発の受注増につながるほか、新サービスの技術をそのまま受託開発案件のサービスに転用することもあるという。
「作ったものは無駄にはならないから、まずは作るのが大事。考えることをあきらめなければ、後からでも十分マネタイズできる」
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