「ITで社会をより良く」――浮川夫妻が新会社「MetaMoji」で目指すもの
ジャストシステムを退社した創業夫妻が、先端技術の研究開発や事業化を行う新会社「MetaMoji」を設立した。
「ITで社会をより良くしたい」――ジャストシステム創業者の浮川和宣氏(60)と妻の初子氏(58)は1月14日、共同で設立した新会社「MetaMoJi」(メタモジ)について説明した。ジャストシステムから譲り受けたXML関連技術など新技術の研究開発や、技術をベースにした新サービスの開発などを行う。
夫妻は昨年10月29日にジャストシステムを退社。30日付けで東京・六本木にMetaMojiを設立した。和宣氏が社長を、初子氏が専務を務め、社員数は16人。全員がジャストシステム出身で、ほとんどが技術者という。資本金1000万円は夫妻が全額出資した。
ジャストシステムから、基本オントロジー辞書の開発事業やXMLサーバアプリの開発環境「PXL」事業、財務報告用のXMLベースの言語「XBRL」(eXtensible Business Reporting Language)に関する技術の譲渡を受けており、まずはこれらの技術を発展させ、事業展開していく。
新技術をベースに事業を立ち上げ、事業が軌道に乗ったら外部の出資や協力も仰ぎながら事業会社を設立して成長させる、技術ベンチャーのインキュベーターとして経営。5年後に事業会社1〜2社の株式上場を目指す。
ジャストシステムとは違う切り口でゼロからやりたい
「30歳になる前にジャストシステムを創業したが、いつの間にか60歳になっていた。これからできることを考え、ジャストシステムの仕事とは違った切り口でゼロからやろうと決意した」と和宣社長は話す。
具体的な事業内容は未定で、今後具体的な検討を進めるが、浮川社長は「アイデアがたくさんわいてくる」と話す。「ITを使えばこんなことができるのに、と常々考えてきた。今、実現されているサービスは、ITの可能性のほんの一部に過ぎない。『あの時あの人があれを作ってくれて助かった』と思ってもらえるサービスを作り、多くの人に喜んでもらい、社会をより良くしたい」
プログラムの知識がなくても、ブログを書くように簡単にアプリケーションを開発できる環境の構築も目指すという。例えば、ダイエット本の筆者が自らダイエットアプリを構築したり、ビジネス本の筆者がそのノウハウを生かしたビジネスアプリを作る――といったことができるようにし、「知識を後世に残すことに貢献したい」(初子専務)。
夫妻はジャストシステムを1979年に創業。「一太郎」「ATOK」を生み、育ててきた。「スペースキーで変換するというユーザーインタフェースはわたしが作った」(和宣社長)など、夫妻には、IT分野の研究開発で社会に貢献してきた自負もある。
だがジャストシステムは2006年からXMLアプリソリューション「xfy」(エクスファイ)に投資。北米など海外にも進出し、経営の柱に育てようとしていたが、市場は想定したように拡大せず苦戦。06年以降は4期連続で連結営業赤字を計上していた。09年4月からキーエンスの傘下に入り、6月に和宣氏が社長を退任。10月に夫妻そろって退社した。
ジャストシステム創業から退社までの30年の総括を問われた和宣氏は「まだ生々しくてちょっと早すぎる。新会社を作ることに忙しく、総括はもうちょっと先にしたい」と言葉を濁していた。
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