スペースシャトル最後の日、NASA管制室には日本の個人が作ったWebアプリが
最後のスペースシャトル「アトランティス」帰還の日。緊張が走るNASA管制室の大型スクリーンには、日本の個人が趣味で作ったWebアプリが映し出されていた。
30年にわたったスペースシャトル計画に幕を閉じた7月21日。最後のスペースシャトル「アトランティス」の帰還を待つ米航空宇宙局(NASA)の管制室では、日本の個人が趣味で作ったWebアプリが大型スクリーンに映し出されていた。その心境を作者がブログにつづっている。
Googleマップ上に国際宇宙ステーションやハッブル宇宙望遠鏡の軌道をリアルタイムに表示する「GoogleSatTrack」(GST)の作者、柏井勇魚さんは、帰還への軌道離脱噴射指令をアトランティスに出すNASA管制室の大型スクリーンに、見慣れた画面が映っているのに気付いた。
すぐに自ら開発したGSTだと思ったものの、信じられなかったという。「いや、だって、一介のアマチュアプログラマが作ったWebアプリが、ミッションの中でも一番クリティカルな大気圏再突入前のミッションコントロールセンターの画面に映っている。これで信じろという方がおかしい」から。
これまでGSTではシャトルの軌道表示について、軌道離脱噴射が終了した跡はトラッキングを止めていた。公開されているデータでは離脱後の軌道を追えないからだ。ここでいつも通り、GSTでトラッキングをやめると、NASAの管制室からも表示が消えることになる。
迷ったものの、「開発者としてこれ以上は精度を保証できない」とトラッキングを切った。数分後に管制室の画面からシャトルのアイコンが消えた。「ああ、やっぱりあれは自分の作品だったんだ」。
これまでもサーバのログに「nasa.gov」ドメインが残っていたこともあり、NASAにユーザーがいるのは知っていたという。2008年には、GSTが縁になりNASAからディスカバリーの打ち上げに招待されたこともある。だが「あの、私、プログラマーでもなければ、軌道力学の専門家でもないですよ?プログラミングは趣味でやってるだけですよ?」。
「よりにもよってシャトル最後の夜にこんなことが起きるなんて」。柏井さんはつづっている。「僕はただ、自分の見たいと思っていたものを作っただけだ。それはずっと変わらない」。「子供のころからの夢の象徴みたいなもの」だった、スペースシャトル最後の夜に起きた「ごく個人的な小さな小さな奇跡」だが「僕にとってはとてつもなく大きな出来事」だった。
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