「auはエンタメ視聴スタイルを変える」──KDDI、定額制サービスをコンテンツの「パスポート」に
KDDIが定額制コンテンツ配信「ビデオパス」「うたパス」を開始。アプリ利用し放題の「スマートパス」が早くも100万契約を突破した同社は自信を深めており、「エンタメ視聴スタイルを変える」と定額制サービスを拡大する。
KDDIは5月15日、スマートフォン夏モデルの発表と同時に月額課金の定額制コンテンツ配信サービス「ビデオパス」「うたパス」を発表した。アプリを利用し放題の「スマートパス」が開始から2カ月半で100万ユーザーを突破しており、同様の定額制サービスを2大エンタメコンテンツである映画と音楽に水平展開。いつでも気軽にコンテンツを楽しめるサービスで「auはエンターテインメントの視聴スタイルを変えたい」(田中孝司社長)と意気込む。
定額制コンテンツ配信サービスは世界的に普及が進んでおり、動画配信の米Huluは昨年日本に上陸。「うたパス」と「似たサービス」(KDDIの高橋誠専務)として挙げられたネットラジオ・Pandraは世界で1億5000万超のユーザーを抱えている。普及が進むスマートフォンを突破口に、日本でも定額制サービスの普及が進む可能性が出てきている。
「音楽のau」を再び
「ビデオパス」(5月15日開始)は月額590円で映画やアニメなどの過去作品と最新作1本を視聴でき、「うたパス」は月額315円で「チャンネル」ごとに配信される邦楽・洋楽が聴き放題になる。それぞれau IDを介してAndroidスマートフォン/タブレットのほかPCなどでも利用できるマルチデバイス対応をうたう。
ビデオパスでは過去作が見放題のほか、最新の映画が1本、レンタルと同じタイミングで視聴できる。高橋専務はHulu(月額980円)やNTTドコモの定額制サービスと料金など比較してみせ、「日本の会社なので邦画やアニメにも強く、毎月新作が1本ついてくる。圧倒的に有利な料金では」と自信を見せる。
うたパス(6月中旬開始)はチャンネルを切り替えてさまざまな曲を楽しめるネットラジオ的サービス。「一度は聴いておきたい洋楽ロック」「叫びたい時に聴くJ-Pop」など50チャンネル以上があり、流れてきた曲に対して気に入ったらアプリのハートマークを押し、そうではない曲はスキップしていくことでユーザーの好みに基づいた曲が再生される「マイチャンネル」もある。友達が聴いている曲を一緒に再生できるソーシャル的な仕組みも持つ。
「クパチーノの方とも交渉していきたい」
田中社長は(1)定額制、(2)マルチデバイス、(3)ソーシャル──を「auからの提案」として挙げ、コンテンツをクラウド上に置き、au IDを活用することでさまざまな端末からコンテンツを楽しめるサービスを実現したと説明。高橋専務は「auといえば音楽のイメージが強い。最近引いているのではないかとも思われているが、ここでもう1回一生懸命やっていきたい」と意気込む。
うたパスは今後、楽曲購入につなげる仕組みを導入するなどしてレコード会社の理解を得て、邦楽タイトルの拡充を進めていく。提携するFacebookのOpen Graphを活用してauサービス上のユーザー行動のFacebookでのシェアを促すなど、Facebook連携も強化していく考えだ。
ビデオパス、うたパスのiPhone対応は「調整が必要」(高橋専務)という。既にクレジットカード決済の定額制音楽配信の「LISMO unlimited」はiPhoneに対応しており、Appleに認められた格好だ。田中社長は「われわれとしてはAndroidでもPCでもiPhoneでもSTBでも、マルチデバイス環境で利用できるのが願いだ。クパチーノ(米Appleの本社所在地)の方とも交渉してきたい」という。
「エンターテインメントのパスポート」
今年1月に打ち出した「スマートパスポート構想」は、スマートフォンやタブレットから利用できる「『オープンで制約のない世界』へのパスポート」となるサービスを提供していくというコンセプトだ。
固定とのセット契約で料金を割り引く「auスマートバリュー」は2カ月半、月額390円でAndroidアプリを利用し放題になる「auスマートパス」は2カ月で100万契約を突破した。特にスマートパスについては「コンテンツサービスが2カ月で100万契約は本当に驚きだ。史上初ではないか」(田中社長)と喜ぶ。
「初動としてはいい形でここまできている」(同)と自信を深める同社が「スマートパスポート構想の『STEP 2』」として繰り出すのが「エンターテインメントのパスポート」というビデオパスとうたパスだ。スマートパスは今年度末500万契約を目指し、ビデオパス、うたパスは「数十万程度」の契約を獲得したい考えだ。
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