検索
ニュース

「市場を公正なものに」「CDが売れるようにはならない」──著作権法改正案、参院で参考人質疑(2/3 ページ)

違法ダウンロードに刑事罰を導入する著作権法改正案が参院で審議され、津田大介さんらへの参考人質疑が行われた。「日本の文化を守るために不可欠だ」「刑事罰化の前にやることがある」と、賛成・反対の立場から参考人が意見を述べた。

Share
Tweet
LINE
Hatena

「刑事罰化する前にやることがある」──日弁連

photo
日弁連の市毛事務次長

 日弁連の市毛事務次長、津田さんは反対の立場から意見を述べた。

 市毛事務次長は、2年前の「違法ダウンロード」導入時に当時の文部科学大臣が罰則は科さないことを明言しており、「施行後2年で立法事実の何が変化したのか。修正案の前提としてきちんとした説明がなされていない」と批判。「私的領域への刑事罰導入は極めて慎重であるべきだ」という日弁連の基本的立場から、刑事罰の対象となる「違法コンテンツのダウンロード」という行為について、罪刑法定主義の観点から明確になっているのか議論すべきとし、処罰対象が故意犯だったとしても故意かどうかを判断するのは非常に難しいと指摘した。

 違法ダウンロードは音楽ファイルだけでも12億ファイルなどとされるが、この全てのダウンロードを検挙して裁判にかけることは不可能であり、「権力にとって都合の悪い人に対してだけ刑罰の執行が行われる危険性をはらんでいる」と捜査当局による乱用も懸念。日弁連としては民事上も許されるべきとは主張しておらず、違法コンテンツが正規コンテンツ流通を阻害していることも認めるが、「刑事罰化する前にやることがある。アップロード側の刑事罰化に抑止効果があったのかの検証すら聞いていない」「抑止的効果として導入するのであれば抑止的効果があるのか、どうか違法アップロードへの刑事罰執行状況を勘案しながら慎重に協議すべきだ」とした。

「ユーザーは萎縮することで買わなくなる」──津田さん

photo
津田さんは「不謹慎な金髪を呼んでいただきありがとうございます」と登場

 津田さんはまず、文化庁管轄の私的録音録画小委員会で委員として議論に参加してきた経験を振り返り、違法ダウンロード導入の賛成者も刑事罰化は「バランスが悪い」と反対していたことを挙げ、「政治家の仕事は多様な立場の人の意見をきき、利害を調整して大所高所から政策をやっていく、媒介としてのメディアのようなものだ。今回の場合、法曹関係者の多くがバランスが悪いと考えているのは厳粛に受け止めていただきたい」とした。

 刑事罰導入の「筋の悪さ」から、音楽業界の要望を受けた自民・公明の議員立法による修正案で改正案に盛り込むという経緯も「一部の業界の意見だけを聞いている」と批判。「違法ダウンロードの被害は6800億円近いという調査結果があるが、CDのピーク時だった90年代後半の市場が6000億円だったのに、被害が6800億円というのはバーチャルに過ぎるのではないか」と、根拠などが偏っているのではないかと指摘。「偏った結果に対してチェックして慎重に議論してやっていくのが国会の役割。それがチェックなしで進んでいくのは非常に残念だ」とした。

 「一番の問題は社会全体に影響が及ぶ著作権法をいじること」。刑事罰で効果がなければYouTubeなども対象に広がるなど、今後規制範囲が広がっていく恐れに加え、いずれ全ての著作物に拡大されることになれば「全ての著作物が違法か合法か分からない状況で違法化・刑事罰化が拡大された時、ユーザーの半分以上がよく知らないままに違法行為をしてしまうことにつながる」と懸念。「ネットは知る権利のために使われている重要なものであり、この問題は音楽業界の保護だけではなく、情報通信の秩序にかかわるものだ」とした。

 コンテンツ業界の収益が拡大する方向を目指す点では同じだが、刑事罰導入で「CDが売れるようになるかというとならない。たぶん下がっていく」と効果を疑問視。「ユーザーは萎縮することで単純に買わなくなる」とみる。

 対案として、国の文化予算の増額を挙げる。「文化庁の予算は1000億円だが、諸外国に比べても全然安い。韓国は日本の5倍の5000億円をかけ、国策としてコンテンツを輸出している」とコンテンツ関連に国が金をかけて伸ばしていくことを提案する。「刑事罰化で音楽市場が伸びないのは最悪だ。この問題は音楽業界だけの問題ではなく、社会全体に影響が及ぶ問題であり、5年、6年と時間をかけて慎重に行う議論であり、今回はやめていただいたほうがいい」と刑事罰導入を見送るよう求めた。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る