「市場を公正なものに」「CDが売れるようにはならない」──著作権法改正案、参院で参考人質疑(3/3 ページ)
違法ダウンロードに刑事罰を導入する著作権法改正案が参院で審議され、津田大介さんらへの参考人質疑が行われた。「日本の文化を守るために不可欠だ」「刑事罰化の前にやることがある」と、賛成・反対の立場から参考人が意見を述べた。
抑止効果はあるのかないのか
質疑では、「スリーストライク法」を導入したフランスで、違法ダウンロードが減ったことで音楽業界の収益が上がったのか、議員から問われた岸教授が「音楽配信市場は規制によって売り上げが伸びた」と答えたものの、フランスの音楽産業自体はマイナス成長だったことを指摘され、「経済状況などの要素によって変わる。検証を始めた瞬間に多くの変数が出てくる」と、規制による効果の検証は難しいとした。
日弁連の市毛事務次長によると、日本レコード協会からは違法アップロードについて告訴したのは2011年度で6件だったという。「アップロードに対しての刑事罰がきちんと施行されていると言えないのではないか。それでも必要ならその段階で議論するので構わないだろう。今の段階で検証がなされていないまま通ってしまうのは民主主義のルールとしていかがなものか」と疑問を呈した。
津田さんは「効果があまり見込めない反面、副作用としてユーザーの萎縮が起こるだろう」と見るが、久保利弁護士は「刑事罰では可罰的違法性があるのかどうかなど全ての事件についてチェックがかかるし、違法ダウンロードでもチェックは当然かかる」と簡単なダウンロードでは検挙されないだろうとの見通しの上で、「なにを萎縮するのか。違法行為をしないように萎縮するのであれば、それは抑止なのではないか。それで音楽から離れていくなら仕方がない、正規品も欲しくない、CDも欲しくないという音楽しか作ってないのなら仕方ないだろう」と述べた。
岸教授は、違法ダウンロード禁止だけでは文化は進化しないことを認めた上で、コンテンツ業界の未来に向けて、(1)魅力ある作品を作ること。音楽業界に限らず、収益が下がったため制作力が弱くなっている、(2)ビジネスの構想力が足りない。海外ではSpotifyなどストリーミング聴き放題サービスなども出てきている──ことを挙げた。津田さんは、録音録画補償金の延長的な考えとして、サービス業者などから「コンテンツ税」的なものを徴収し、クリエイターに還元していく方向もあるのではとした。
関連記事
- 違法ダウンロード刑事罰化・著作権法改正案が衆院で可決
違法ダウンロードへの刑事罰導入を盛り込んだ著作権法改正案が衆院を通過。 - 「ユーザーも声あげて」――違法ダウンロード刑事罰化問題、予断許さぬ状況
違法ダウンロードの拙速な刑事罰化に反対する国会議員が徐々に増えているが、予断を許さぬ状況に変わりはない。「ユーザーは選挙区の議員に働きかけてほしい」と、津田大介さんは言う。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.