漫画家支援「JコミFANディング」 DRMフリーの漫画セット+直筆サインで2100円
絶版漫画の無料公開サイト「Jコミ」で閲覧された漫画が1000万冊を突破。新たに、DRMフリーの漫画と作家の直筆サインをセットにし、限定販売するビジネスを始める。
漫画家の赤松健さんが社長を務めるJコミは9月14日、絶版漫画の無料公開サイト「Jコミ」で閲覧された漫画の冊数が1000万を突破したことを記念し、漫画家を支援する新たなビジネス「JコミFANディング」をスタートすると発表した。特定の作品や作家について、DRMフリーの漫画データと作家の直筆サインなどをセットにし、期間限定で募ったファンに2100円で販売する。電子書籍とリアル特典をセットにすることで、ファンの所有感を満たせるよう工夫した。
まず15日正午から、赤松さんの作品で構成する「『ラブひな』パーフェクトPDFセット」と、漫画家・がぁさんの「がぁさん作品×8本PDFセット」でβテストを行う。ラブひなのセットは、ラブひな全14巻と、下書きまたはネーム1話分のPDFデータ、直筆サイン入りハガキなどをセットにしており、50人を目標に販売。サイン入りはがきがいらない場合は1050円でデータだけを購入できる。申し込みが50人を超えた場合は、サイン入りはがきなしで1050円で販売する。
価格を2100円に設定したのは、「作者直筆サイン入りのハガキが手に入るチケットが1000円ならまあ安いが、3000円となると電子書籍としては高すぎる」と判断したため。電子書籍ファイルをDRMフリーにしたのは、あらゆる端末にコピーして閲覧でき、「たとえJコミが倒産したとしても、無関係にずっと所有し続けることができる」など、「所有感を演出できる」ためだ。PDFデータには購入者の名前やメールアドレスなどを刻印した電子透かしを入れ、違法配信を抑制する。
赤松さんは電子書籍が売れない理由として、「紙の本と似たような値段の割には所有感が感じられない」「いつでも買えるため、今買わなくてもいいか、という気分にさせられる」ことを挙げ、所有感を満たしながら、今買ってもらえる仕組みとして「JコミFANディング」を考案した。DRMフリーのデータに電子透かしを入れるアイデアは、「ハリー・ポッター」シリーズ著者のJ.K.ローリング氏が運営する「ポッターモア」から、期間を区切り、目標額を設定して支援金を募る仕組みは、クラウドファンディングからヒントを得たという。
これまでJコミが行なってきたビジネスは「小さな善意」を集めるモデルだったが、JコミFANディングは「少数の選ばれたファン層から少しお高いお布施を集めるモデル」としている。
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