ジャンプ作品など無料公開へ 赤松健「Jコミ」、集英社や講談社も協力
「漫画文化を絶やさないようにしたい」――赤松健さんの「Jコミ」は、ジャンプ作品や新條まゆさんの作品も無料配信し、収益を公開する計画。正式オープンは来年1月の予定だ。
「漫画文化を絶やさないようにしたい」――漫画家の赤松健さんは12月6日、絶版漫画を無料配信し、広告収益を作者に還元する「Jコミ」について説明する記者会見を都内で開いた。「ラブひな」に続き、今後はジャンプ連載作品なども公開。広告を出稿する企業を募っている。正式オープンは来年1月10日の予定だ。
Jコミは、絶版漫画に広告を入れ、PDF形式で無料配信するサイトで、11月26日にオープン。まずβテストとして「ラブひな」全巻(1〜14巻)を、広告付きで無料公開。初日に45万ダウンロード(DL)あり、12月3日までに170万DLを突破。広告クリック率は10%近かったという。
年内にも実験第2弾「β2テスト」を実施。新たに、(1)「週刊少年ジャンプ」(集英社)に2007年度に連載されていた少年漫画1作品(作品名は未公開)と、(2)新條まゆさんの読み切り少女漫画(約50ページ)、(3)青年漫画「交通事故鑑定人 環倫一郎」(樹崎聖さん漫画、梶研吾さん原作、集英社)――の3作品を、広告入りPDFで無料配信する。
「ラブひな」の配信実験時は広告を無料で出稿してもらっていたが、β2テストでは、企業から広告費をもらって広告を掲載し、広告代理店の手数料を除く広告収益はすべて作家に分配。その額を公開する。収益の見通しを示した上で多くの漫画家の参加を募り、来年1月10日の正式サービスにつなげる計画。漫画内で広告を配信したい企業も募集中だ。
β2テストは、少年ジャンプの佐々木尚編集長から賛同を得るなど集英社も協力。講談社の取締役陣からも協力を取り付けたといい、「参加する漫画家の安心感につながるのでは」赤松さんは期待する。
「漫画文化を維持したい」「違法配信に対抗」
「水曜日に電車に乗ってもみんな、(水曜発売の)マガジンやサンデーを持っていない。小さい子は、漫画の読み方が分からなくなっていると聞く」――赤松さんは、漫画の将来に「危機感を持っている」と話す。
Jコミは、「漫画を読むという文化を絶やさないようにする」ための試み。絶版という「埋もれてしまう寸前の漫画を救済し、漫画を文化として救済していきたい」と意気込む。
同時に、ネット上で違法に流通している漫画ファイルへの「唯一の対抗手段」とも。ファイルはDRMフリーでコピーし放題。コピーされればされるほど広告も複製され、漫画家の収益が拡大するというモデルだ。
「もうけようとは思っていない」ため、収益はすべて作家に還元。Jコミの運営費は、トップページのバナー広告などからまかなう計画だ。
来年1月の正式公開以降は、ユーザーがアップロードした漫画PDFファイルに広告を付け、作者の許諾を得た上で配信したり、翻訳漫画を海外に配信したり、原作者が許諾した同人誌もJコミから配信する――といったことにも挑戦していきたいという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「ラブひな」無料配信スタート パンツや“ヤバゲー”の広告入り
赤松健さんが、「ラブひな」全巻の広告入り無料配信をスタート。広告のクリック率などを調べ、本格的な漫画無料配信事業につなげる。 - 「ラブひな」全巻無料公開へ 赤松健氏、ネット漫画の新ビジネスに挑戦
「ラブひな」などで知られる人気漫画家の赤松健さんが、絶版漫画を無料配信し、広告収益を作者に還元するビジネスに乗り出す。 - 「ブラよろ」無料公開の効果は 佐藤秀峰さん、赤裸々な数字明かす
漫画家の佐藤秀峰さんが、自身の漫画「ブラックジャックによろしく」を「漫画onWeb」で無料公開した結果を公開。売り上げにプラスの効果があったと報告しつつも、市場の厳しさもつづっている。 - 「ブラックジャックによろしく」も全話無料公開 「海猿」に続き
漫画家の佐藤秀峰さんが、「海猿」に続き「ブラックジャックによろしく」全話を無料公開した。 - 太っ腹! 漫画「海猿」全話、作者自ら無料公開 第1話はYouTubeでも
漫画家の佐藤秀峰さんが漫画「海猿」全119話を1カ月間限定で無料公開した。第1話はYouTubeでも公開。太っ腹! - 「変化を自分で作りたい」 村上龍氏が出版社と組まずに電子書籍を出す理由
電子書籍を出版・販売する新会社を、作家の村上龍さんとIT企業が組んで設立した。制作コストを公表し、利益配分を透明化することで、電子書籍ビジネスの公平なモデルを示したいという。 - 「出版社に頼らない漫画制作を」――「新ブラックジャックによろしく」作者自らWeb配信
「新ブラックジャックによろしく」を、作者の佐藤秀峰さん自らWebサイトで公開する。「出版社に頼ることなく漫画を制作し続けることができるか実験」するという。