「よくないまとめも目立ってきた」――「NAVERまとめ」がインセンティブ制度を全面刷新
「NAVERまとめ」で優れたまとめ作者に報奨金を支払う制度がリニューアル。今後はアクセス数だけでなく、流入元サイトや閲覧時間など“アクセスの質”も加味してインセンティブ額を算出していく。
NHN Japanは12月5日、「NAVERまとめ」で閲覧数などに応じてまとめ作者に報奨金を支払う「まとめインセンティブプログラム」を全面リニューアルすると発表した。アクセス数という「量」の要素に加え、新たにアクセスの「質」を評価する仕組みを用意。不正な方法で多くのPV(ページビュー)を獲得しようとするユーザーに支払う額を減らし、まとめ全体の質の向上につなげるのが狙いだ。
NAVERまとめは、テーマにそってテキストや画像を集めて編集した「まとめ」を誰でも作成して公開できるサービス。今年10月末時点の月間アクセス数は8億1700万、訪問者数は3300万人/月に上っている。インセンティブ制度は、優れたまとめの作成を促進するため2011年11月にスタート。今では月間60万円ほどの収入を得ているまとめ作者もいるという。
だが、サービスの成長とは裏腹に「良くないまとめと出合う機会が増えてきた」とNHN Japanの島村武志 執行役員/CPOは話す。「ほとんどのユーザーはちゃんとまとめを作成してくれているが、10%に満たない一部ユーザーは、SEO的な“テクニック至上主義”に走ってしまっている」
例えば“数打てば当たる”の論理で中身の乏しいまとめを大量に作成したり、まとめ記事内に自分が作った他のまとめへの誘導リンクを並べたり――といった「テクニック」でPV稼ぎに走るまとめが目立つようになったという。「たとえ数%の人しかそういうことをしないにしても、そのわずかなユーザーが普通の人の100倍多く活動すると、それが結局目立ってしまう」(島村さん)
そこで新制度ではアクセス数に加え、閲覧者の流入元サイトや、まとめ記事ページ内での滞在時間などをポイント評価軸に追加。例えばNAVERまとめ内からのアクセスに対する評価を大きく下げ、FacebookやTwitterといった外部SNSからのアクセスを高く評価するなど、テクニックに頼ったポイント獲得をしにくい仕組みを用意する。主な変更点は次の通りだ。
- 他のまとめ記事(自作/他作問わず)からのアクセスの評価を低減
- まとめトピックページからのアクセスの評価を低減
- 外部SNSサービスからのアクセスの評価を増大
- 閲覧者のページ滞在時間を評価軸に追加(極端に滞在時間の短いアクセスや、長いアクセスの評価を低減)
- まとめ記事内の画像など「アイテムページ」へのアクセスの評価を低減
これらの変更点は来年1月1日に適用予定。「まとめ読者の方をちゃんと向き、いい内容のまとめを作ることに注力してもらいたい」と島村さんは話す。
各レートの算出方法は非公開だが、「低減」の項目は「内部レートを知ったら二度と(不正を)やらなくなるほど、めちゃくちゃ下げた」と島村さん。一方「増大」の項目は「ユーザーにとってちゃんと意味があるレベルで引き上げている」という。
「まとめ奨励金制度」も厳しく刷新
優れたまとめ作者に「奨励金」を付与する「まとめ奨励金制度」も刷新する。従来は月間ポイント数の推移に応じて「レギュラー」「ルーキー」という2つの評価枠を用意していたが、新制度ではこれらを「トピックピッカー」として1つに統合。3カ月連続で月間1万ポイントを獲得したユーザーをトピックピッカーに選び、翌3カ月のポイント当たりの換金レートを「1ポイント=0.5〜1.0円」(通常0.2円)へと優遇する方式を採用した。
トピックピッカーの期間は通常3カ月で終了する。次の3カ月もトピックピッカーとして選ばれるためには、期間中に2回、月間ポイント数の「自己ベスト」を更新する必要がある。また、一度トピックピッカーでなくなると2度と戻れないなど、従来の制度と比べて「非常に厳しい仕組み」(島村さん)となっている。
島村さんによれば、これまでの奨励金制度では、奨励金の対象者として一度選ばれたまとめ作者が、記事を書く本数を少なく抑えるなどの「テクニックを駆使して得をするパターン」があったという。そこで今回、常に最高スコアを目指さないと2度とトピックピッカーになれなくなる“緊張感”をまとめ作成者に持ってもらうことで「ユーザーに頑張る方向性を適正化してもらいたい」としている。
まじめに活動するユーザーにより大きなフィードバックを
「われわれは『こういうまとめを作ってください』とユーザーに言うつもりはない」と島村さん。あくまでNHN Japanとしては、ユーザーの興味関心に基づいて自由にまとめを作成してほしいというスタンスだ。だが「アクセスを獲得することだけにまい進しているようなユーザーは数字からも分かる」と島村さんは言う。
「誰が見てもおかしいことが明らかな記事もあるので、そういうものをランクダウンする。そうすることで、当社もそこに払うコストが減るし、その分まじめに良い活動をしているユーザーにより大きなフィードバックを返せるようになる」(島村さん)
また、SNSからのアクセス流入をどのように評価するかなど、インセンティブの算出に関する指標は今後も変えていくという。「当社がその時点で何を重視するかを制度として加味しながら運用していく。ゴールとしては、閲覧者にとっていいサービスであることを目指している。その妨げになるものは除外していくし、促進するものは取り入れていく」(島村さん)
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