「ネットはリアルにどんどん浸食されている」――ニコ動6周年 川上会長に聞く、リアルに投資する理由(4/4 ページ)
ネットサービスながら、「超会議」や「ニコファーレ」などリアルイベントへの投資を加速するニコニコ動画。「ネットとリアルの境界がなくなりつつある」と、ドワンゴの川上量生会長は言う。
ネットのライブ配信は、編集されたテレビ番組と違ってノーカットで見られるというメリットが強調されることもあるが、起伏のない生中継を、最初から最後まで飽きずに見られる人は多くはない。実際、「国会中継も東電の記者会見も毎回生中継しているが、普段は視聴者数が少ない」という。
「みんな本当は、編集された情報が見たいが、編集のされ方に文句があって気に入らない」のが、テレビ批判の背景にあると川上会長。「生放送は、編集前のコンテンツのチェック機能としての意味があるが、丸ごと配信はみんな、本当は求めていない。今後ニコ動で、みんなに見てもらう報道番組やるとしたら、編集番組になるだろう。そういう議論や葛藤がテレビの世界にもあって、編集するようになったはず。テレビが編集された映像を流すのは、どこかの陰謀ではなくて、みんなが望んだ現実のはず」
ビジョンは……「生き残る」
リアルへの進出を深めてきたドワンゴだが、それが経営の重しにもなっている。「ニコニコ超会議」は4億7000万円もの赤字を計上。超会議とニコファーレを含むライブ事業では、合計9億5100万円の営業赤字を計上し、「ニコニコ動画」を中心としたポータル事業の営業利益・15億2300万円を、リアルへの投資で食いつぶしているようにも見える(前期の決算より)。
「ちょっと反省しています」――巨額赤字についてそう話しつつも、「これぐらいのお金は使ってもいいと思っている」とも。この投資は、「ネット企業として常に旬であり続けるため」のもの。「超会議や党首討論で世の中を騒がせ、サイトをフレッシュに保ちたい」という意図がある。
「ネット企業が常に旬でありつづけるのは難しい。例えばmixiは、今でも重要なサービスだと思うが、世間的には終わったと思われている。ニコ動も他人事ではない。党首討論や超会議で世の中を騒がせることや、サイトをフレッシュに保ってユーザーに飽きられないことは、ネット企業にとって本質的に重要」
「ニコ動はいまだに、ネット企業の中でトップランナーだと認識していただいている。その背景には、無駄だと思われている政治へのコミットや、超会議がある。ネットは世の中の新しい可能性を築くという期待感があるからこそ、求心力がある。それは失ってはいけないし、そこには惜しげもなくお金を突っ込むべきだと思っている。ニコ動がなくなったら、意味がないから」
ニコ動の長期戦略の根本は、「生き残ること」にあるという。「今の50代、60代がニコ動を見るようになるのは難しい。だが、ゲーム人口が増えたのは、子どものころゲームやってた人が大人になってもやめなかったから。それと同じことがニコ動で起きる。ユーザーは垂直に増えていくから、生き残る方が有利。時間は僕らの味方だと思っている」
6年間、生き残ってきた結果、党首討論が実現したり、任天堂が「ニコニコ超会議2」の特別協賛につくなど「事件」が起こせた。「もともと社会的に認められにくい領域からスタートした企業としては、6年間かけて築き上げたものがあったんだなと思う。ニコ動が大事なものだとみなさんに思っていただけ、いろんな人に応援していただいているのは、幸せなことだ」
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