変わる「中国的幸福論」 「2ちゃんねらー」「干物女」的な「ディャオスー」現る(3/3 ページ)
経済の失速に大気汚染。GDP向上こそ幸福につながると努めてきた中国で「幸せって何?」と価値観が変わりつつあるという。ネットでは“結婚なんかできそうもない”自虐的な「ディャオスー」が現れ──山谷氏による現地からのリポート。
ネット環境は充実しているが……「不幸」なディャオスー
ネットの流行語でもある「ディャオスー」を自称する人々は、自らPCやスマートフォンで日々ネットを利用している。物価と収入が上がる中、デジタル製品は値段が下がり年々入手しやすくなり、スペックも上がっている。スマートフォンに至ってはキャリアの3Gプランを契約するだけでタダでHuaweiやZTE、Lenovoなどの端末が入手できる(農村部でも入手可能だ)。こうした中国のネット事情のおかげで、「微博」などの中国人しか利用しない独自SNSの利用者が億単位となり、広告付き無料動画コンテンツやアプリも普及することになった。
つまり中国人は日本人同様、「安い情報端末を入手」して「無料コンテンツ」を楽しみ、「SNSで居酒屋談義」ができる環境がある。日本で「若者の○○離れ」の話題が流れると、2ちゃんねるで「伴侶がいなくても物欲を満たさなくても、ネットができるならそれで満足」といった意見をよく目にする。携帯キャリア提携による実質無料のスマートフォンは日本でもあるが、実はアジア各国でこうしたキャンペーンを実施しているのは中国くらいで、またアジア各国では自国に最適化されたコミュニケーションサイトがあるわけではなく、他国から見れば比較的「幸せ」のようにも思える。
それでも中国のディャオスーは「不幸」だという。様々な意見を見聞きするに、彼らの意見は「何はなくとも仕事で成功し金持ちになりたい。金持ちにならなければ不幸だ」というところに落ち着く。だがチャイニーズドリームを実現したところで幸せかというとそうでもない。大手ポータルサイトのひとつ「捜狐」(SOHU)の張朝陽CEOは3月、「私にはあらゆるものがある。しかし苦しい。幸福と資産は本当に全く関係ないのだなと思った」とテレビで告白し、ネットで話題になった。張氏のように大富豪になり、欲しいモノを何でも手に入れられるようになった挙げ句に「スピリチュアル」な世界に走る中国人の話は各地で耳にする。
中国メディアは「幸せの定義」について所得やGDPからの転換を促しているようだが、それでもネットユーザーは高所得を目指している。そう考えると一般大衆と官は現状マッチしていないとも言えるし、人々はやはり環境よりも金を優先しているようだとも言える。また中国経済がソフトランディングする中、人々の向上心は金のため、当面は高いまま維持されそうとも解釈できよう。
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