大学講義を広く無償公開、希望者には対面学習の機会も 「JMOOC」発足、来春から配信へ
大学レベルの講義を無償公開するプラットフォームの運営・活用を推進する「日本オープンオンライン教育推進協議会」(JMOOC)が発足。来年4月にサービスを開始し、「100万人規模のサービスを目指す」という。
大学レベルの講義をオンラインで無償公開するプラットフォームの国内での運営・活用を推進する「日本オープンオンライン教育推進協議会」(JMOOC、理事長:白井克彦 放送大学学園理事長)が10月11日に発足した。来年4月から、東京大学など全国13大学が講義の配信を開始する計画だ。
2012年から米国で普及が進んだ大規模オープンオンライン講座(MOOC:Massive Open Online Course)の日本版を目指し、プラットフォーム構築やコンテンツ作成などを進める。大学関係者らのほか、NTTドコモ、ネットラーニング、住友商事、富士通など企業もプラットフォーム構築などで参加する。
現在講義の提供を予定しているのは、東京大学、京都大学、慶應義塾大学、早稲田大学など全国13大学。統計学やコンピューターサイエンス、歴史学や政治学に加え、服飾の歴史、サブカルチャー論など、ジャンルも多岐に渡る。通常の学内講義の配信ではなく、オンライン学習に最適化したオリジナル講義となる。来年4月のサービス開始後、2014年度中に順次公開していく予定だ。
「大学のあり方変わってもいい」
米国のMOCCでは多くのコースは無料で受講でき、任意の講義を動画で閲覧し、オンラインで課題や小テストなどを提出することで、学期末に修了証が授与される。大学の正規単位や企業の採用基準に認められるなど、社会的に活用される場面も増え、「インターネットを通して誰でもどこでも、熱意に応じて学ぶことができる革命的な手段」(白井理事長)として、欧米を中心に世界中で広がりを見せている。
日本版MOCCは、英語圏で展開する既存のプラットフォームと異なり、講義の多くを日本語で展開。英語に対する苦手意識の強い日本人はもちろん、日本の歴史や文化、ファッションなどに関心を持つ主にアジア圏からの受講も期待する。
一部の講義には「反転学習」メソッドを導入する。東京大学の山内祐平准教授の指揮のもと、説明型の基礎部分をオンライン教材で予習し、従来宿題で試されていた思考力や応用力を要するディスカッションや質疑応答の部分を対面で行うもので、学習効果を高める狙いがある。対面学習部分は有料オプションとして参加者を募る。より深く学びたい人に、通常の無料コースに加え担当教授と直接対話できる機会を用意する形態は、MOOCサービスとして「世界初」(山内准教授)という。
「目標は日本の大学すべてが参加すること」(福原美三事務局長)と、今後の提携大学拡大を見込む。協議会は5年間の時限を設けて一般社団法人として設立し、5年目以降の存続可否を3年目に判断する。「明確な数値目標はまだ定めていないが、同様のサービスの世界での広がりを見ると、利用者100万人は超えていなければならない」(同)とした。
白井理事長は、「学術的な知識を身につけ視野や知見を広げたい社会人や、少し背伸びすることで進路選択に役立てられる高校生など、多くの人の人生を変えていける可能性があるプロジェクトと考えている。無料で運営することは大学にとって脅威ではという意見もあるが、逆に言えば、インターネットの広がりを踏まえて大学のあり方も多少なりとも変わっていい。海外サービスと競争する意識ではなく、自分たちの提供できるものをきちんと届け、社会全体の知的レベル向上に貢献したい」と話している。
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