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3年分の実験ノートは2冊だけ──「不正行為は小保方氏1人」 理研の調査委、STAP細胞自体には踏み込まず

「STAP細胞」問題について理研の調査委が会見。2点の研究不正を認定した。小保方氏の3年分の実験ノートが2冊しかないことが判明するなど、データ管理のずさんさが改めて浮き彫りになっている。

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 理化学研究所は4月1日、所属する小保方晴子・研究ユニットリーダーなどの研究グループが英科学誌「Nature」に発表した「STAP細胞」の論文に不自然な点が相次いで指摘された点について、調査委員会による最終報告書を公表し、記者会見で説明した。2点の研究不正を認めた上で、それぞれ小保方氏1人によるものだったとの判断を示した。

 一方、小保方氏は調査委の報告に「驚きと憤りの気持ちでいっぱい」「悪意のない間違いであるにもかかわらず、改ざん、ねつ造と決めつけられたことは、とても承服できません」というコメントを発表。理研に不服を申し立てる意向を明らかにした。

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会見した調査委

 中間報告段階で継続調査とした4点のうち、(1)学位論文の画像に酷似した画像を論文1に使用したことを「ねつ造」、(2)論文1で電気泳動画像を切り貼りしたことを「改ざん」と認定し、「研究不正行為を行った」と判断した。それぞれ小保方氏1人の不正だったとし、共同研究者は不正行為を行っていないとしている。

 調査を通じ、小保方氏の3年分の実験ノートが2冊しかないことが判明するなど、データの管理がずさんだった点が改めて浮き彫りに。報告書では「研究者倫理とともに科学に対する誠実さ・謙虚さの欠如が存在すると判断せざるを得ない」と指弾する。

 相次ぐ疑惑を受け、STAP細胞の存在が疑われる自体にまで発展しているが、調査委は「不正を確認するのがミッション。STAP細胞があるかどうかは科学的な研究が必要で、ミッションを超えている」(調査委委員長で理研上席研究員の石井俊輔氏)と踏み込まなかった。

 調査委員会は石井上席研究員を委員長に、千葉大学の岩間厚志教授、理研グループディレクターの古関明彦氏、東京医科歯科大学の田賀哲也氏など理研内外の6人で構成。調査対象は、理研発生・再生科学総合研究センター(理研CDB)研究ユニットリーダーの小保方氏に加え、論文の指導に当たった理研CDBの笹井芳樹副センター長、丹羽仁史プロジェクトリーダー、以前理研CDBに所属していた若山照彦・山梨大学教授。複数回にわたるヒアリングやデータ提出を受けて調べた。

学位論文と酷似した画像「ねつ造」 実験ノート、3年間でわずか2冊

 論文1に、学位論文の画像と酷似した画像を掲載していた(1)の点について、論文1では、「酸処理で作成した脾臓由来のSTAP細胞」としていたが、学位論文の画像は「細いピペットを通過させて作った骨髄由来のSTAP細胞」と説明するなど、細胞の由来も作製方法も異なっていた。

 小保方氏と笹井氏からは2月20日、「間違った画像を掲載したため差し替えたい」との申し出があり、調査委は差し替え用の画像を受け取ったが、その際、間違って掲載した画像が学位論文と同じ画像だとの説明はなかったという。

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 調査委は、「明らかな実験条件の違いを認識せずにこの画像を作製したとの説明を納得することは困難」「データの信頼性を根本から壊すものであり、その危険性を認識しながらなされたと言わざるを得ない」とし、「小保方氏がねつ造に当たる研究不正を行った」と判断した。

 Nature論文中の画像と学位論文の画像は、文字などに一部異なる点があり、画像の由来を調べるため、調査委は小保方氏から実験ノートの提出を受けたが、3年間の実験ノートが2冊しかなく、記載内容も、日時がはっきりと書かれていないなど荒かったため、科学的に追跡することはできなかったという。

 実験ノートについて、調査委員長の石井氏は「これまでに学生や若いポスドクを数十人指導してきたが、これだけ断片的な記載は経験がなく、実験がフォローできるのか」と疑問を呈した。調査の過程で、3月13日から実験室の閉鎖を行うなど証拠保全を行っているが、小保方氏のノートPCなどは私物だったため提出は受けていないという。

 画像のねつ造は小保方氏が単独で行った行為だが、共同研究者の若山教授は「データの正当性・管理について注意を払うことが求められていた」、笹井副センター長は「データの正当性、正確性を自ら確認することが求められていた」とし、2人について「研究不正行為を行ったわけではないが、その責任は重大」と判断した。

画像の切り貼りは「改ざん」

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 電気泳動の画像のコントラスト・明るさ、サイズを変えて切り貼りしていた(2)の問題は、「小保方氏が改ざんに当たる研究不正を行った」と判断した。小保方氏は「切り貼りしてはいけないと知らなかった」と話しており、調査委が小保方氏の説明の通りに画像を切り貼りしても、小保方氏が作成した画像からは少しズレがあったという。

 調査委は切り貼りについて「研究者を錯覚させる危険性があり、手法は科学的な考察と手順を踏まないものだった」と指摘。「データの誤った解釈へ誘導することを直接の目的として行ったものではないとしても、そのような危険性について認識しながらなされた行為であると評価せざるをえない」と判断した。

 切り貼りについて、共同研究者の笹井副センター長、若山教授、丹羽プロジェクトリーダーには「不正行為はない」と判断した。論文提出前にすでに改ざんが行われており、「容易に見抜くことができるものではなかった」ためとしている。

文章コピペは「不正に当たらず」

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 他人の論文を引用の記載なくほぼ丸ごとコピーした疑いと、その文章の一部が実際の実験手順と異なっていた点については「不正に当たらない」と判断した。小保方氏は論文内で41の引用論文の出典を明らかにしており、出典が書かれていないのは1カ所のみであること、記載内容の実験手順が一般的で、手法が多くの研究室で共通であることなどを理由にあげている。

 理研は午後、野依良治理事長などが出席する記者会見を改めて開き、調査委の報告を受けた対応を明らかにする。調査委は、報告書に対する調査対象者の不服申し立てを受け付けた上で、その役割を終える。

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