「2.5次元ミュージカル」世界へ 漫画・アニメ原作舞台を「世界標準のエンタメに」(2/2 ページ)
漫画・アニメを原作にした「2.5次元ミュージカル」の世界展開を目指す業界団体が発足。世界でファンを抱える日本産コンテンツを強みに、世界で上演されるブロードウェイミュージカルのように「日本発の世界標準エンターテインメント」を目指している。
日本発の独自ジャンルに
日本はニューヨーク、ロンドンに続く世界第3のミュージカル市場。だが、上演されている多くが欧米の作品だ。「仮に興行的に失敗してもブロードウェイやウェストエンドは絶対に儲かる仕組み。このままではお金を収め続けるだけ」(ホリプロの堀社長)──こんな現状への危機感も、2.5次元ミュージカルで世界に打って出る背景にはある。
日本の漫画・アニメは世界に数多くのファンがいる優れたコンテンツだ。これを手がかりに、便宜上ミュージカルとしながらストレートプレイも含んだこのジャンルを「欧米のミュージカル市場に匹敵する、日本が産んだ独自ジャンルとして確立したい」(松田誠代表理事)と意気込む。
「日本2.5次元ミュージカル協会」の設立は、各社単独ではなく、同協会が包括して情報の窓口となることで、2.5次元ミュージカルの普及を支援するのが狙いだ。具体的には、(1)海外向けに演目カタログを作成し、劇中曲目、必要な役者やスタッフの数などをパッケージ化して紹介、(2)日本文化を発信する海外コンベンションへの参加、(3)海外公演やライセンスビジネスの展開――などに取り組む。
海外公演は、日本人キャストがツアーとして赴く形式はもちろん、将来は現地で独立して上演してもらい、ロイヤリティー収入を得る形が理想だ。「中国やアジアの新興国は『劇場はあるが上演するコンテンツが不足している』というパターンも多く、若年層にリーチする演目として日本のアニメや漫画の魅力は大きい。海外からの問い合わせや、上演を求める直談判も少なくない中、協会として取りまとめることで、より強力にスピード感を持って推進していきたい」と松田代表理事は自身の実感も含めて説明する。
ホリプロは、当初から世界展開を視野に入れた「DEATH NOTE」を来年、韓国と共同制作する予定だ。ブロードウェイの一流クリエイターもスタッフとして招き、同作品の世界的な人気を追い風に、アジアや欧米への展開を図っていく。発表当初から反応が大きく、堀社長は「ネットでは『ホリプロ本気か』という声もありましたが、一応……本気です」と、期待に応えたいと話す。
国内の盛り上げも課題だ。国内の演劇鑑賞人口は約1%と言われており、「99%の人が日常的に触れていないということ、まだまだ市場は広い」(松田代表理事)とファン層を広げていく方法を模索する。
「日本の演劇ファン全体を見ても、やっぱり夢を買ってくれるのは圧倒的に女性」と、今は女性向け作品が多いが、男性やシニア・キッズ向け作品にも取り組んでいきたい考え。「男性が買いたくなるような夢も作りたい、頑張ります」(同)。
「まずは民間でがんばろう」
政府主導で「クール・ジャパン」政策も進む中、松田代表理事は「政府とは情報交換はしているが、まずは民間で頑張ろうという気持ちが強い。演劇自体がお客様からいただいたお金でいいものを作る行為なので、支援ありきでやりたくはない」とする。
ホリプロの堀社長は「むしろこちらから国を動かしていくような気持ち。役人はまだ気付いていないが、関わるパートナーも多い総合エンターテインメントとして、成長すれば確実に大きな市場になる。説明する労力をかけるくらいなら、スケールメリットを見せて振り向かせたい」と意気込んでいる。
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