偉大であり続けるのは難しい──“ジョブズ後”のAppleは「光らなくなった」か 「沈みゆく帝国」著者語る(5/5 ページ)
ジョブズ亡き後のAppleは“偉大な企業”でいられるか――200人以上に取材を重ねて“ジョブズ後”のAppleを追った「沈みゆく帝国」著者が来日し、Appleの今と今後を語った。
200人近くに会いました。スティーブがいたらこれほど話を聞けなかったと思います。スティーブの怒りは相当怖く、ビジネス抜きでもしゃべりたがらない人だから。Appleに二度と戻る気がない人でもスティーブをリスペクトしているし、スティーブから怒りの電話がかかってくるほど面倒なことはないので、彼が話して欲しくない内容の取材は断られたでしょう。
Appleはグローバルに取材することが大切だと思ったので、シリコンバレーだけでなく中国や韓国、ロンドンなど世界各地で取材しました。Appleの製品は中国で組み立てられ、マーケットは世界中。ヨーロッパの市場や中国の工場、サプライヤーとの関係も自分で確かめたいと。ロンドンでは、Appleの工業デザインのトップのイギリス人の昔の友人や同僚に話を聞き、彼のデザインルーツを探ったり、米国ではクックの故郷の南部・アラバマ州ロバーツデールまで行きました。
アラバマはすごく良かったです。最初は地球の果てに行くような気持ちで、向かう空港のゲートの人にも「本当にここに行くのか?」と確認されるほどの“ディープ・サウス”でしたが。農業が盛んな地域で、サービスが良くてみんなフレンドリーで、市長が来て挨拶してくれたり。
ティムはそこでごく普通の育ち方をして。頭は良いし、すごく努力家でもあり勉強も頑張る子だったと。ビジネスセンスもあったみたい。高校で、毎年学生が作る「イヤーブック」で、彼は「ビジネスマネージャー」に選ばれていたんです。先生にビジネスセンスがあると思われていて、数字にすごく強かった。
――執筆作業は、ライターが集まる特殊なオフィスでやっていたと聞きました。
そうですね。フィクション、ノンフィクション、詞や脚本を書いている人……いろんな経験のある人が60〜70人集まるオフィスで。ジャンルを超えて情報のシェアああり、すごく助かりました。AppleとGoogleのスマートフォン戦争を描く「Dogfight」という本を書いたフレッド・フォーゲルシュタイン記者もいて、ライバルでもありますが、いろいろなニュースについて話し合い、分析していました。そういう人がいるだけでも楽しかったですね。
――(会場からの質問)岩谷さんの今後の興味は?
また本を書きたいし、トピックを探していますが、次は終わりが分かっているものにしたいですね(笑)。書きながらニュースが起きるのはつらい。今回は、最後の数カ月で5章足したみたいな背景もあるので、最初からどう終わるかわかるストーリーを書いていきたいなと思います。
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