「やめといたら?」と言われたが、出してみると大反響 DeNAの“オタク情報”専門アプリ「ハッカドール」が目指す未来(4/4 ページ)
「やめといたら?」。DeNAのオタク情報専門ニュースアプリ「ハッカドール」は、社内で何度も止められたという。「面白いコンテンツよ、もっと届け!」――アプリには、企画者のそんな思いが込められている。
ただ、これらのビジネスが大成功したとしても、アプリ単体の収支はトントンかわずかな黒字にとどまるとみている。「大事なのは、ユーザーとコンテンツをつなぐ道を敷くこと」。多くの人やコンテンツが通る広い道を作ることができれば、その周辺の“道の駅”や“街”も発展。業界全体が活性化し、DeNAのエンタメ関連ビジネスの利益にもつながると期待する。
ハッカドールの目標は「武道館単独ライブ」だと岩朝さんは笑う。「数百万インストールなどの目標もあり得るが、武道館やシビックホールでの(ハッカドールの声優による)単独ライブを目標に掲げたほうが盛り上がるので」
10年後も「尖った」コンテンツが出せる環境を
ハッカドールの真の狙いは、単体でのビジネス化や武道館ライブの成功ではなく、エンタメ業界全体の活性化だ。
「いまのエンタメ業界はあまりサステイナブルではない」と岩朝さんは指摘。1週間に約50本ものテレビアニメが放送されているが、費用を回収できるのは半分以下。アニメーターや製作会社、出資者が赤字を被っている。
岩朝さんはハッカドールのキャラクターデザインやイベントの台本制作、楽曲の作詞などにも参加。「サービスのプロデューサーになったつもりが突然アイドルのプロデューサーになっていた」と仕事の広がり方に驚いている
赤字のリスクを回避するために製作会社は、既存のヒット作のシリーズ化に頼るなど安全策を採らざるを得ない。「そうなると資本力の勝負になり、作品がどんどんマス向け・画一的になる。文化的案側面が減って独自性が失われ、プレイヤー数が減ってエンタメのバリエーションが減ってしまうのはすごくつまらない」
ハッカドールが目指すのは、多様なコンテンツを多様なユーザーに届けるマッチングの場だ。コンテンツとユーザーをつなぐ“道”を太く大きくすれば、“尖った”作品が埋もれることなくふさわしいユーザーに届き、エンタメの多様性の確保につながると展望する。
理想とするのはコミケだ。「コミケは、ファンが興味のある作品やキャラに触れ、より深く知る情報収集の場」。ハッカドールも「オンライン版コミケ」のようなイメージで、作品とユーザーをつないだり、ユーザーの意見を作品に反映させられる場に育てていきたいという。
「『初音ミク』や『モンスターストライク』『パズル&ドラゴンズ』も、ビッグヒットを確信して出したものではないと思う。それぐらいの“遊び”というか、尖ったものを出せる余力、雰囲気を作りたい」
「ハッカドールもDeNAの中では“尖った遊び”。全員に止められたが、出してみると社内外から反響いただいた。こういう遊びは続けていくし、もっとみんなもやればいいと思う。もっとチャレンジャーが出てきてほしい。そのための場としてハッカドールが活躍できればありがたい」
関連記事
- 「おもしろいものを、おもしろいと思った人に届ける」ことが難しい時代に それを最短距離で届ける「電子」の試み
「売れる」「売れない」で二極化する現代の娯楽産業は、「おもしろいものをおもしろいと思ってくれる人に届ける」ことがもはや難しくなってしまったが、電子ならそれができるのでは――作家発の電子書籍「AiR(エア)」を主宰する堀田純司さんの論。 - 「君にシンクロするアプリ」 DeNAの萌えキャラプロジェクト「ハッカドール」はニュースアプリだった
謎に包まれていたDeNAの萌えキャラプロジェクトが正式公開。アニメ・マンガ・ゲームなどの情報を配信するニュースアプリ「ハッカドール」だ。 - DeNAの新プロジェクト「ハッカドール」が同人マーク採用 「いわゆる薄い本OKマーク」
DeNAが新プロジェクト「ハッカドール」の公式サイトを公開。情報解禁前だが、「いわゆる薄い本OKマーク」こと「同人マーク」の採用や、サイトソースに記された謎の日記が話題になっている。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.