日本のVOCALOID発売から10年、中の人たちの思いは? 「MEIKO」生誕10周年イベントに行ってきた(2/2 ページ)
日本初のVOCALOID音源「MEIKO」誕生から10年を迎えた。10周年生誕祭では、ボーカロイドの父・剣持さんとクリプトンの伊藤社長が当時を振り返ったほか、MEIKOの中の人こと拝郷メイコさんらが“VOCALOIDと中の人とのギャップ問題”を語った。
VOCALOIDと中の人とのギャップ問題
拝郷さん、風雅さん、浅川さんによるVOCALOID中の人座談会では、「同じフレーズの再録音ではスタッフの気遣いも含めて傷つく」など録音のときの苦労話や、歌手・声優としての自分自身とキャラクターとのギャップなどが面白おかしく語られた。
ボカロ曲を歌うとき、VOCALOIDの音域を要求されるのは、専業の歌手だから逃げられないし大変だと風雅さんは笑う。一方、拝郷さんはボカロとは違うからときっぱり。「いくつもあきらめてきましたよ。わたしは歌えるものをがんばって歌わせてもらう」
中の人になったことで特に困ったことは、「おっぱいですね」と拝郷さん。MEIKOは大きいという「設定」が一般化しているため、そういうふうに期待されている。V1のパッケージのMEIKOに比べ、V3では大きくなっている。「どっかでだれかがしたんですよ!」と糾弾し、会場を笑いの渦に巻き込んだ。
良かったことも、もちろんある。
「この年でこんなに若い方々とお会いできるのはKAITOの声をやらせてもらっていたおかげだ」と風雅さんはうれしそうに語る。KAITOの 歌声では「英語が一番自分に近い」とお気に入りだ。
声優である浅川さんは、アニメのローカライズという特性上、言語が違うところには自分の声は届かないが「共通の言葉である音楽では、自分の分身である声が届く」とありがたく思っているという。
拝郷さんは、地方でライブを行ったときのエピソードを披露した。引きこもりになっていたファンが「家でMEIKOを大好きで聴いていて、メイコさんに会うためにすっごく久しぶりに家を出たんです」と言ってくれた。そういう人たちのところまで自分の声が届いているということに感動したという。
VOCALOID次の10年
イベントの最後を飾るのはライブ。まず風雅なおとさんがKAITO曲を2曲披露し、トリは拝郷メイコさんの歌。アコースティックギターとキーボードをバッキングにしっとりと、そしてパワフルに歌い上げる。浅川悠さんとの妖艶なデュエット「magnet」や風雅なおとさんとの迫力のボーカルバトル「on the rocks」を含む5曲に、会場のボカロファンは酔いしれた。
ライブの終了後、やはり人間の歌声はすごいですね、と剣持さんに話すと、プロのシンガーならではの表現力に近づくためのアイデアがいくつかあることを教えてくれた。この技術が将来のVOCALOIDに実装されればより一層人間の歌声に近づくことだろう。
「次の10年も同じようなイベントが開けるようにがんばりたい」と伊藤社長。ビートルズが踏んだ同じステージで初音ミクのテレビライブが全米放映され、ニューヨークでの公演も熱狂的な反応を得るなど、世界へのステップも順調に進めつつある。VOCALOIDの次の10年、まだまだ期待できそうだ。
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