ゲームと融合・新しい観光の可能性 岩手県の「Ingress」活用、その成果は
岩手県庁が職員有志による「Ingress活用研究会」の報告書を発表した。自治体が主体となって活用する際のポイントや課題をまとめている。
岩手県庁は3月26日、「Ingress活用研究会報告」を公表した。広報活動やイベント開催など、半年に渡って続けた取り組みの経緯や成果を踏まえ、自治体が主体となって活用する際の考え方や課題をまとめている。
「岩手県庁Ingress活用研究会」は、米Googleが公開しているスマートフォン向け位置情報ゲーム「Ingress」を地域活性化につなげようと、県職員有志10人が昨年発足。ゲームプレイヤーに観光地としての岩手の魅力を発信、来訪や観光スポット巡りを促す狙いだ。
昨年8月末、職員の1人の「これは面白い、何かできないか」というつぶやきからスタート。約1週間後には庁内でメンバーの公募を始め、半年以上にわたって活動してきた。報告書では、県庁や県内観光地に加え県外ユーザーやGoogleも巻き込んだ活動経過を紹介している。
当初の課題は、ユーザーの多い都市部に比べ、地方エリアはポータル(チェックインする拠点)が少ないこと。「自分たちの地域でプレイヤーにどのように遊んでもらえるか、ゲーム以外の+αにどう興味を持ってもらうか」を指針に、歴史的・文化的な場所にまつわる物語の面白さ、行き着くまでのチャレンジ性などの魅力を持つポータルを増やすことに注力した。
11月には盛岡の市街地をガイド付きで街歩きする中でポータルを申請するイベントを開催。県内外から想定の倍の応募があり、計60人の参加者が集まった。2月はさらに160人規模に拡大したイベントを実施、地元店舗との連携などにも取り組んだ。
イベントでは、ガイドの案内による街歩きの人気が最も高く、地域への興味を喚起できたという。また「mission」機能による地元の面白そうなミッションへの関心も高かったが、ゲーム内の記述をガイドブックなどで補うといった仕掛けは効果があるとしている。
新しい観光生まれる可能性
Ingressの持つ可能性として、(1)ゲームと訪問との融合による新しい観光・交流、(2)自分が住む地域の再発見、(3)官民協働の促進、(4)ネットとリアルをつないだO2O(Online to Offline)型の新たな情報発信──などを挙げる。
一方で、地元への経済効果は未知数とも。ゲーム自体へのハードルが高いこともあり、Ingressを知らない観光客や地元の人へのアプローチが課題な上、Googleという1企業のプラットフォームへの依存もリスクになりうると指摘する。
今後、民話や震災復興を絡めた「クエスト」の提供、ゲーム内用語「わんこレゾ」にちなんだ名物わんこそばのコラボ、音楽や食イベント、公共交通機関との連携などを検討していく。
研究会は今年度で活動を一旦終了。内外から活動継続への期待は寄せられており、来年度以降の取り組みのあり方や体制は引き続き検討していくという。
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