スペインの洞窟から出土した43万年前のヒト属の頭骨に“殺人”の跡が見つかったと国際研究チームが5月27日に発表した。研究者は「記録上、最古の迷宮入り事件(coldest cold case)だ」と話している。
頭骨はホモ・ハイデルベルゲンシスなどの骨が多数見つかったスペイン北部の洞窟シマ・デ・ロス・ウエソス(「骨の穴」)から出土した。若い成人とみられるが、性別は不明という。
出土した破片から頭骨を復元したところ、左目の上部に2つ、骨を貫通する傷があることが分かった。現代の鑑識手法で調べたところ、洞窟に転落したことでできた傷とは考えにくく、相対した他人から、石器や木製の槍などで攻撃され、致命傷になった跡だと結論した。
シマ・デ・ロス・ウエソスからは少なくとも28体以上のホモ属の骨が見つかっており、発掘された大腿骨から40万年前のDNAの解読に成功したことでも知られる。研究チームは、洞窟が死者の埋葬に使われた可能性もあるとみており、“殺人事件”と合わせ、当時のヒト属が既に複雑な認知に基づいて行動できたことをうかがわせるとしている。
成果はオンライン論文誌「PLOS ONE」に掲載された。
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