毎日2万曲が「勝手に」生まれる――“ユーザーが自由すぎる”音楽コラボアプリ「nana」の狙い(3/3 ページ)
スマホで歌や演奏を録音して他ユーザーと合奏するアプリ「nana」が10代女子に人気だ。運営に勝手で歌バトルをしたり、音楽と関係ない声優オーディションをしてみたり――その“自由すぎる使われ方”について聞いてみた。
収益化は二の次 「とにかくユーザーが楽しめる場を」
急速な収益化は考えておらず、アプリ内にも広告を一切入れていない。音楽レーベルなどと組んでユーザーのプロデビューを支援するビジネスなども考えられそうだが、「楽しく歌っているところにスーツ姿の大人が来たら、みんなびっくりして引いてしまうはず」と消極的だ。
「まずはとにかくユーザーに楽しんでもらえる場づくりを進めたい」と文原CEO。そのために注力しているのが、nanaユーザーを集めて行うリアルイベントだ。昨年1月には、初のユーザー参加型ライブイベント「nanaフェス vol.1 feat.JOYSOUND」を実施。企画運営のほとんどを有志のユーザーで行い、ステージ上ではnanaユーザーから選出されたボーカル6組が生歌を披露したという。
さらに今年8月には、同社として過去最大規模となる1800人規模のユーザー参加型ライブイベント「みんなでつくる音楽祭 nanaフェス」を東京・品川で開く予定。出演者の公募スタートからわずか半月で出演枠の100倍近くの応募が寄せられており、5月には一般向けのチケット販売も始めている。
「nanaはメッセンジャーアプリなどと異なり、毎日使わないと困るような必須のアプリではない。だからこそ、ここに来れば同じ趣味嗜好の人がいるとか、盛り上がっている、イケてると思ってもらうことがすごく大事。そう考えた時に、フェスは1つの肝になると考えている」(文原CEO)
「音楽コラボアプリのスタンダード」に
nanaでは現在「約4秒に1曲」のペースで作品が投稿され、ユーザー主導の楽しみ方も次々と生まれ続けている。だが「そういうことに驚く気持ちはあまりない」と文原CEOはあっさり言う。
「僕自身ももともとニコニコ動画や同人文化が好きで、作品をみんなで作れたら楽しいよねというメンタリティーがあるのは分かっていた。例えばニコ動で『私はミクで曲を作りました』『私は絵を描いてみた』『MMDモデルを作った』『それを使って動画を作りました』――とか。それが当たり前だと思っていたので、驚く気持ちはあまりない」
文原CEOは現在29歳。自身も高専生のころに「スティービー・ワンダーに憧れて軽音楽部に入ったものの、周りと趣味が合わず1回もステージに立たずにやめてしまった」経験の持ち主だ。「自分を表現したいのに独りぼっちだった人はたくさんいるはず。そんな人に友だちができたり、うまくなりたいというモチベーションを生んでもらえる場になれば」。
現状のダウンロード数では満足せず、今後は世界で数百万規模のユーザーを獲得したい考え。「ユーザーがすごく熱狂しているとか、10代の子にとっての新しい音楽の楽しみ方があるとか。そんな空気感を作っていって、音楽コラボレーションアプリのスタンダードに育てていきたい」(文原CEO)。
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