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IBM、カーボンナノチューブ製トランジスタでさらなる半導体小型化に向けて前進
IBMが、シリコンに代わるカーボンナノチューブ製トランジスタの開発で大きく前進したと発表。性能を落とさずに半導体をさらに小型化できるようになるとしている。
米IBMは10月1日(現地時間)、シリコン製トランジスタに代わるカーボンナノチューブ製トランジスタの研究で、大きなブレイクスルーを生み出したと発表した。
同社は昨年、小型化の限界に近づいているシリコンに代わる新素材の研究開発に向こう5年間で30億ドルを投じると発表しており、今回のブレイクスルーはその成果の1つという。
カーボンナノチューブは、右図のような炭素結合が筒状になった物質で、直径は毛髪の1万分の1。
IBMはこのカーボンナノチューブ製トランジスタの開発を以前から進めており、今回新しいコンタクト方法を開発したことでカーボンナノチューブを半導体端末に組み込む際の課題を解決したという。
トランジスタのサイズが小さくなるほど、コンタクトの電気抵抗は増加し、性能低下に繋がってきたが、IBMが開発した新しい冶金プロセスにより、性能を低下させずにコンタクトのサイズを10ナノメートル以下に小型化することに成功したとしている。
量産化までにはまだ幾つかの問題を解決する必要があるが、カーボンナノチューブチップの量産化が可能になれば、ビッグデータ、モバイル端末やIoT(モノのインターネット)端末のバッテリー持続時間や性能の向上、クラウドサービスの強化などに貢献できるとしている。
この研究リポートは2日にSciense Magazineで公開された。
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