LINE、ニュース配信機能をメディアに開放 ポータルサイトの“限界”を超えるか(2/2 ページ)
LINEは、公式アカウントを利用しニュースを配信する機能を、新聞社やテレビ局など24の媒体に開放した。
“読まれないアプリ”にしない――アカウント活用で“ゾンビ化”を回避
同社は2013年、スマートフォン向けアプリ「LINE NEWS」を公開。媒体各社が配信するニュースを要約して表示し、短時間で「ざっくり」把握できるサービスを掲げ、ニュース配信サービスに参入した。
しかし月間アクティブユーザー数(MAU)は300万人ほどでストップ。「LINEとは別に『LINE NEWS』のアプリを起動するのは面倒」との意見を受け、昨年4月に「LINE NEWS DIGEST」をスタートした。LINEアプリの中だけで「ダイジェスト版」を読むことができる上、イメージ画像とシンプルな記事構成も好評だという。MAUは600万まで拡大した(昨年5月時点)。
出澤剛CEOは「世に出回るアプリの約83%が、ユーザーに見向きもされず“ゾンビ化”している」と指摘。専用のニュースアプリを起動せず、コミュニケーションアプリのアカウント内で記事を閲覧できる有用性を強調する。
今年4月には、雑誌の役割を担う「LINE NEWS マガジン」も新設した。「東京トレンド」「野郎メシ」「動物萌え」など、趣味趣向に応じて選べるコンテンツを、公式アカウントから週1〜2回のペースで配信し、今年5月にMAUは1200万人を突破している。
コマース・メディア担当の島村武志さんは、「LINE NEWS マガジン」の事例から「さらなるユーザー拡大には、利用者が視点や興味に応じてコンテンツを選べる仕組みづくりが必要」と話す。
LINEはポータルサイトの“限界”を超えるか
こうした一方、島村さんは「ポータルサイトやソーシャルメディアが、ニュース記事の消費チャネルの主流となっている現状」を疑問視する。
ポータルサイトは、媒体各社が提供した記事を独自に選別し、さまざまなメディアの記事が混在した状態で掲載している。島村さんは「ポータルサイトの名のもとに記事が配信されると、読者は配信元を認識せず、各媒体の非ブランド化が進む」という。
一方、ソーシャルメディア経由では、ユーザーの友人が選んで共有した記事だけがタイムライン上に流通するため、各媒体が持つ視点の多様性が欠如すると指摘する。
島村さんは「ポータルサイトに委譲された各媒体の独自視点を、再度メディア側に回帰させたい」と意気込む。「ポータルサイトやソーシャルメディアによる単一な視点によらない選択肢を提示すれば、ユーザーが好きな媒体を選べる環境ができ、さらなる利用者拡大につながる」(島村さん)。
LINEアプリと「LINE NEWS」公式アカウントを通じ、各社アカウントの集客を支援するほか、ダイジェスト記事内に広告掲載スペースも提供。発生した収益の50%をメディア側に分配する。また媒体ごとの読者をトラッキングするシステムも開発中で、読者の好みに応じて媒体ごとに異なる広告を表示する仕組みも検討する。
島村さんは「媒体が違えば、ニュースの伝え方も選び方も異なる。それぞれの媒体にファンが付くことが、単一視点しか持たない従来のポータルサイトを超える手掛かりになる」と展望を語る。「情報取得の時代だからこそ、読者が共感できる観点を探せる工夫が必要なのでは」(島村さん)。
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