周囲の音をクラウド解析「Listnr」、Cerevoが発売 乳児の声で感情を読み取り
Cerevoが、周囲の音をクラウドで解析し、乳幼児の感情分析などに役立てるデバイス「Listnr」を発売する。
Cerevoは1月22日、周囲の音声をクラウドで解析し、スマートフォンなどに通知するデバイス「Listnr」を発売した。パナソニックとの共同開発で、乳幼児の泣き声から、感情を読み取る機能を初期搭載する。直販サイトで販売を始め、家電量販店などにも順次拡大を予定。価格は1万6900円(税別)。
Wi-Fi接続機能とマイクを搭載したリスニングデバイス。本体付近の音声を集め、リアルタイムでクラウド上にアップロードして解析する。特定の音声を認識すると、本体のLEDが点滅するほか、スマホの専用アプリに通知を送る。サイズは123.5(幅)×96.5(奥行き)×76.5(高さ)ミリ、重さは約190グラム。
乳幼児を持つ家庭向けに、パナソニックの技術を活用した音声認識エンジン「xauris」を搭載。乳幼児の泣き声から「泣く」「笑う」「叫ぶ」「喃語」(なんご:乳児が発する言葉にならない声)といった4種類の感情を認識できる。
認識結果はLEDの点滅で表現し、スマホの専用アプリにも通知。感情を色別にアイコンで表示し、遠く離れた場所から確認が可能だ。Cerevoの岩佐琢磨CEOは「集めた音声をそのまま流しても、赤ちゃんの声を聞き続けることはしない」と説明。「集めた声から感情を抽出し、音声ではなくアイコンで伝える――“ゆるいつながり”がちょうどよいと考えた」(岩佐CEO)。
同機能は0〜2歳ごろの乳児が対象。研究によると、言語を覚える前の乳幼児が発する声は国籍・言語によらず、同様に感情を検出できるという。「声は発しても、感情の理解が難しい乳幼児にターゲットをしぼり、世界共通で展開していきたい」(岩佐CEO)。
開発者向けにAPIも公開し、接続先を「xauris」以外の解析エンジンやサーバーに変更することも可能だ。開発者独自のアプリやサービスとも組み合わせ、クラウド接続型の無線LANマイクとしても活用できる。具体的には、工事現場で異常な音を検出したり、自分の声だけを抽出して配信する――といった活用が見込まれるという。
同製品は当初、スタートアップ企業のInterphenom、Cerevo、パナソニックが共同で開発を進めていた。昨年1月にKickstarterでクラウドファンディングを開始し、目標額を上回る約6万3000ドルを集めたが、3月にKickstarterから停止処分を受けて中断。Interphenomは解散し、Cerevoが開発を引き継いでいた。
「棚がない商品」を世界に売り込む 大企業とベンチャーの協業が加速
岩佐CEOは、スタートアップ企業が生む製品を「棚がない商品」と表現する。「ユニークな新製品は、家電量販店のどの棚に置けば分からず、バイヤーを悩ませる。そんな商品を、家電業界は嫌ってきた」(岩佐CEO)。
一方、大手の家電メーカー各社は「リアルなイノベーションだけでは先が見えない局面にある」とも指摘する。「例えば4Kから8Kへと革新しても、その先に“明るい未来”はなく、新規ジャンルの開拓を迫られているはずだ」(岩佐CEO)。
こうした背景から、資金と開発力で先行する大企業がスタートアップとタッグを組む――というケースが急拡大しているという。岩佐CEOは「2016年は昨年以上に、大企業とベンチャーの共同プロジェクトが増える面白い年になるのでは」と期待を寄せる。
「アイデアレベルでも、冷静に考えてビジネスになりそうなら、製品化して世界に売り込んでいく」(岩佐CEO)
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