鳥のシジュウカラにも、単語と単語をつなげて文を作る能力がある――そんな発見を総合研究大学院大学の研究チームが3月9日に発表した。「作文の能力はヒト特有」という、これまで信じられてきた考えを覆すかもしれない。
シジュウカラは日本全土に分布する小鳥。周囲の危険を仲間に伝える際は「ピーツピ」、つがい相手や群れの仲間を集める時は「ヂヂヂヂ」――というように、状況に応じて鳴き声を使い分ける。
研究グループが、2種類の声を組み合わせた「ピーツピ・ヂヂヂヂ」を再生したところ、周囲を警戒しながら音源に近づくことが分かった。一方、順序を入れ替えた「ヂヂヂヂ・ピーツピ」への反応はなく、語順を正確に認識し、音声の意味を読み解いていたことが明らかになったという。
これまで、オナガザルやチンパンジーなど、異なる鳴き声をつなげる種は見つかっているが、組み合わせや語順で意味の違いを表現する種の発見例はないという。シジュウカラの能力は「構造上も機能上も、ヒトの言語に限りなく近いコミュニケーション」だが、広く動物にみられるものではなく、ヒトとシジュウカラで独立に獲得した収斂(しゅうれん)的な進化の例だとみられ、「言語進化をひもとく上で大きな鍵を握っている」としている。
今後、シジュウカラのさまざまな鳴き声を使い、どれほど複雑な情報を伝えているかを明らかする方針だ。他の鳥類にも同様の能力があるかも研究を進めるという。
成果は「Nature Communications」に掲載された。オンライン版はオープンアクセスになっている。
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