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「今や雑誌は情報ではなく“雑貨”」――女性向けWebメディア「MERY」が紙の雑誌を創刊した理由(2/4 ページ)

月間2000万UUを超える女性向けキュレーションサービス「MERY」が3月に雑誌を創刊。全国でほぼ5万部が完売する反響となった。出版不況や雑誌離れが叫ばれる今、Web/アプリを飛び出し、あえて紙のメディアに挑戦した理由とは――。

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 野崎部長は、Webと雑誌の最も大きな違いは「表現の幅」と振り返る。「雑誌の強みはやはりビジュアルの訴求力。スマホ画面より大きなサイズで、自由なレイアウトで、大判の写真や見開きを駆使して表現できるのは大きな違い。情報の取捨選択の仕方や考え方が変わってくる」(野崎部長)。

「雑誌は今や雑貨」 情報量よりも“世界観”

 誌面を作る上で強く意識したのは、MERYの“世界観”を伝えることだった。プラットフォームとしてのMERYは、あえてテイストを定めず、女の子らしいものからカジュアル路線、オフィスワーカー向けまで多様な趣味嗜好の読者に向けたコンテンツを提供することを心がけている。雑誌では逆に、想定読者層を狭め、これまで配信してきたコンテンツの中でも特に反響の大きい“ガーリーでスウィート”な雰囲気を全面に押し出した。

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誌面は全体的にパステルカラー
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ファッションはもちろん、メイクや雑貨のページも“ガーリーでスウィート”

 表紙は薄いピンク色に金色のハートマーク。コーナー名も「ピンクの力を信じてる」「ミルキーカラーで甘〜く」などガーリーな文言が並ぶ。猫のイラストがあしらわれたアクセサリーやグッズを集めた「猫パケアイテム大集合」は、Webでも人気が高かった企画だ。ビジュアル的にも色味の淡いもの、ソフトフォーカスがかかったものなど、Instagramのフィルターのような加工が施された写真も多い。

 SNSのような身近さを残しつつ、意識したもう1点は“憧れ感”。表紙の有村架純さんをはじめ、AKB48の島崎遥香さん、高畑充希さんなど、テレビや雑誌で活躍するタレントやモデルを多数起用している。「有村架純の顔になりたい」というコーナーがあるように「まねしたい」「こうなりたい」という気持ちを醸成するような構成になっている。

 スマホアプリが「すぐにできる」「私でもできる」「明日使える」ことを意識し、行動に移すことを前提としたものであれば、雑誌は自分の興味や関心、好みを形で示すもの――雑誌でイメージを抱かせ、具体的な方法や手順はアプリで見てもらう。メディアミックスを前提にアプローチを変える見せ方は、Web/アプリからスタートしたからこその発想だった。

 例えば「高橋愛に学ぶ足もとカジュアルのススメ」では、誌面では高橋さんの私物のスニーカーを使って全身をスタイリングし、Webでは高橋さんの私物の詳しい紹介や、具体的な「靴紐の結び方」のアレンジにフォーカス。まねしやすく噛み砕いた解説を掲載することでメディア間の回遊を促し、Web上で10万PVを超えるヒット記事になった。他にも、モデルの撮影オフショットはWeb記事で公開、誌面に登場したファッションアイテムをアプリ上で販売――などの連動施策を積極的に取り入れた。

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誌面ではスタイリングを紹介
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Webやアプリに誘導
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より具体的なティップスは記事で

 即時性を求めるWebコンテンツと異なる“憧れ感”を一層高めるべく、デジタルでは作れない質感にもこだわったという。500円という値段ながら、厚めのしっかりとした紙に金の箔押しも施された「安っぽくない」見た目に仕上げている。

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