「メッセンジャーの陣取り合戦は終わった」──日米同時上場のLINE、次の戦略は
「スマホメッセンジャーの陣取り合戦は終わった」――日米同時上場したLINEは、世界展開を視野に入れる。だが、単なるメッセンジャーアプリだけでは、他SNSとの競争激化は避けられない。そんな状況を踏まえ、同社が打ち出す戦略「スマートポータル」とは。
LINEが7月15日、東証1部に新規上場した。公開価格3300円を48%上回る4900円の初値を付け、時価総額は約1兆円に。ニューヨーク証券取引所にも7月14日(現地時間)に上場し、日米で今年最大の上場となった。同時上場の意義を、出澤剛社長は「世界展開への決意の表れ」と話す。
同社は、メッセンジャーアプリ「LINE」やキュレーションサービス「NAVERまとめ」、ブログサービス「livedoorブログ」などを運営。前身企業のNHN Japanから2013年4月にLINEに社名変更した。
主力サービスのLINEは11年6月にスタートし、13年7月にユーザー数が1億人を突破。16年3月末の月間アクティブユーザー数(MAU)は約2億1840万人に達しているという。「東日本大震災をきっかけに、家族や友人と連絡が取れるように生まれたサービスが、いまやたくさんのユーザーが使うインフラに成長した」(出澤社長)。
「スマートフォンメッセンジャーの陣取り合戦はほぼ終わった」
日米同時上場の意義について出澤社長は「日本生まれのサービスを、世界中のユーザーに使ってもらいたいという決意の表れ」と話す。だが、単なるメッセンジャー機能だけに特化したサービスでは、他SNSとの競争を生き抜くのは難しいと考えているという。
「スマートフォンメッセンジャーの陣取り合戦はほぼ終わった」(出澤社長)。LINEのようなメッセンジャーアプリは、ユーザーが増えれば増えるほど、友人を見つけたり、コミュニケーションの密度が高まり、利用価値が上がる――という「ネットワーク効果」が強い。そのため、あるサービスが先に高いシェアを得てしまえば、後発のサービスが登場しても、ユーザーが乗り換えにくい特徴がある。
ある国や地域で、すでに圧倒的な数のユーザーを集めたサービスがあると、LINEが新規参入するのは困難だ。こうした現状を踏まえ、出澤社長は「スマートポータル」という構想を打ち出す。メッセンジャー機能を入り口に「LINE MUSIC」「LINE GAME」「LINE PAY」などさまざまな連携サービスへとユーザーを誘導する狙いだ。
「PC時代のポータルサービスのように、検索エンジンだけでなくさまざまなサービスに事業拡大していくイメージに近い」(出澤社長)
当面は、既存ユーザーが多い日本、台湾、タイ、インドネシアにフォーカスしてサービスを展開し、スマートポータルのノウハウを蓄積していく。日本のサービスをそのまま海外に展開するのではなく、現地の文化や慣習に合わせてカスタマイズして提供する。例えば、学校との結び付きが強いインドネシアでは、同級生のアカウントを検索する独自機能を実装。交通渋滞がひどくバイク便が普及しているタイでは、ランチのデリバリーを頼めるサービスを提供する――といった具合だ。「ローカライズを徹底した“カルチャライズ”によって、アジアではやや後発でもシェアの巻き返しに成功した」(出澤社長)。
「メッセンジャーの次は、こうした“スマートポータルの波”が来るはず。世界を見据え、サービスの向上に尽力したい」と出澤社長は話している。
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