「人工知能? 人間が人間を作ろうとしているだけの話です」 楳図かずおさん(79):「わたしは真悟」30年(5/5 ページ)
80年代の漫画作品「わたしは真悟」で、ネット社会や人工知能を予見した楳図かずおさん。30年経った今、テクノロジーの行き着く先をどう見ているのか。
PCもスマホも持たない生活
――楳図さんはPCやスマートフォンは使われていますか?
まったく。最初、携帯電話を買ったんですが、すぐめんどくさくなってやめました。携帯とかPCが出た時点で、そっちの道はいかないよと。その代わり外国語の勉強をするようになりました。フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語、英語を。
――ネットが嫌なのは、検索結果などがすぐ出ることに違和感があるから?
パッと答えを出してくれて、いいとは思うけれど、自分自身の身に着いているものなのかどうかが、ちょっと違うと思いますから。
――今後また、漫画を描くことはありますか?
ないです。たぶん。面倒くさい(笑)。話を作りたいという気はあるけど。映画もやりたいなと思うけど、面倒くさいわー。お金で縛られるでしょ。予算と現実を兼ね合わせてできるできないを決めないといけないから、話をいくら面白くしようとしても、それを絵柄にするには、お金の問題で進まない。だからここから先は日本じゃなくて、米国の映画会社から映画監督の声がかかるといいなと。
――もし今の社会背景を踏まえて、SF漫画を描くとしたら、どういう作品になりますか?
そうですね……。1つは、ITのなかのホラーですよね。それ以上はネタに関わるから(笑)。人間って、どこまでいっても興味があるのは人間なんです。これがヒントです。
――スマホは使っていらっしゃらないそうですが、楳図さんの作品を基にしたLINEスタンプが3種類出ています。
漫画そのものがみなさんに見ていただけるというだけでも素晴らしいので。(LINEトークの)お話のなかに、僕の作品を入れていただけるなら、文句を言う筋合いはないです(笑)。
スタンプは絶好調です。最新作は動くスタンプ。僕の絵がそのまま、こんなにリアルに動くのは、アニメでもこれまで一度もなかったので、本人が見ても楽しくて。アニメは、他の人が描き換えた絵で動いているので、いまいち細かいニュアンスが入っていない気がしたけど、スタンプはすごいです。本物のキャラの迫力がしっかり出ていると思って、ぜひ見てもらいたい。
――漫画のコマがコミュニケーションに使われることは、これまでないことですね。
人間が進化してくるのと同様に、漫画もある意味、進化していく。そう考えたら全然おかしくなくて、本でない形も、こうやって進化していくというのはありだと思う。スタンプも、せりふは作中のものとは全然違いますが、絵柄がしっかりしているので、漫画の“基”をどう活用するかという活用範囲の1つだから。
私の作品を知らない人にも楽しんでいただいて、何かの機会に漫画も読んでもらえればそれでいいと思う。「漫画しかありません」という言い方をしていたら、それはイソギンチャクですね。
――テクノロジーが発展すれば、楳図さんの原画を基にした長編アニメもできるかもしれない。
ネットの進化の話を、僕の世界だけにしぼって考えると(笑)、僕のアニメーションのドラマをはじめから最後まで作れるよう進化してほしいなと。今回のスタンプは、僕の原画を基にしたアニメーションのはしりな気がしていて。
コンピュータの進化が危険な方向に行くよりは、「アニメにしにくい楳図の絵柄を、最初から最後まで動かしてみよう、それはできるぞ」、というふうに進化したら、みんな喜んでくれると思います。中には嫌がる人もいるかもしれないけど(笑)。
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