Facebook、「ナパーム弾の少女」を“ヌード”だとして削除(抗議を受け復活)
Facebookが、大手新聞社の記者が自身のページに投稿した歴史的反戦写真「ナパーム弾の少女」を「コミュニティ規定」に反するとして削除し、物議を醸した後復活させた。新聞社の編集長はザッカーバーグCEO宛の公開書簡で「ジャーナリストの権利と義務は、Facebookのアルゴリズムによって傷つけられるべきではない」と抗議した。
米Facebookが、ページに投稿された「ナパーム弾の少女」として知られる歴史的反戦写真を、裸の少女が写っているからという理由で削除し、それに抗議したユーザーを24時間投稿停止にした。この件が大きな反響を呼んだ後、Facebookは写真を復活させた。
削除されたのは、ノルウェーの大手新聞Aftenpostenの記者、トム・エーゲラン氏が8月19日に自身のFacebookページに投稿したもの。反戦運動のきっかけとなった歴史的な7枚の写真を紹介するストーリーに掲載されていた7枚の報道写真の中の1枚(現在投稿は復活したが、ナパーム弾の少女は削除されたまま)だ。
ナパーム弾の少女は、1972年にAP通信のベトナム人の報道写真家、ニック・ウット氏が撮影した。ナパーム弾投下から逃げてくる子どもたちを正面から撮影しており、その中に被弾してやけどを負い、焼けた服を脱ぎ捨てて裸で走る少女が写っている(この少女はウット氏が病院につれていき、現在はカナダで暮らしている)。ウット氏はこの写真でピュリツァー賞を受けた。
Facebookはエーゲラン氏に対し、この写真はFacebookの「コミュニティ規定」に反するとして削除について連絡してきたという。その後エーゲラン氏が同じ写真を再度掲載し、コミュニティにFacebookの行動について議論しようと呼び掛けたところ、同氏のアカウントは9月5日から24時間投稿停止になった。
Aftenpostenやノルウェーのエルナ・ソルベルグ首相なども、同じ写真をそれぞれのFacebookページに掲載したが、同様に削除された。ソルベルグ首相は写真の少女の部分を黒い四角で隠したら掲載できたとして、「Facebookの行為は、たとえ善意によるものだとしても、われわれが共有する歴史を編集するものだ」と批判した。
Aftenpostenの編集長であるエスペン・エジル・ハンセン氏は9月8日、Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOに抗議する公開書簡を新聞の一面と、同紙のWebサイトおよびFacebookページに掲載した。
ハンセン氏はザッカーバーグ氏に対し「世界中のすべてのジャーナリストの権利と義務は、あなたのカリフォルニアのオフィスで稼働するアルゴリズムによって傷つけられるべきではない」と抗議した。
「もしあなたがチャイルドポルノと反戦ドキュメント写真の区別がつけられないなら、あなたが掲げる“世界中の人々を結びつける”という目標は、ばからしいプロモーションだし、失敗するだろう」(ハンセン氏)
英Guardianによると、Facebookは当初、写真削除の決定について「われわれはこの写真が歴史的なものであることは認識しているが、ヌードが写っている1枚の写真の掲載を許可し、別の写真は許可しないという判断基準を作るのは難しい」と説明していた。
だが、こうした批判や抗議を受けてFacebookは9日、Facebook上から削除していたナパーム弾の少女の写真を復活させた。同社は英Guardianに対する声明文で「コミュニティの意見を聞いた上で、このケースに関してはコミュニティ規定の解釈を見直した。裸の子どもの画像は通常はわれわれのコミュニティ規定に反するし、幾つかの国では児童ポルノと見なされる。だが今回は、この画像には歴史的、世界的な重要性があると認識している。(中略)だから、削除した画像を復活させることにした」としている。この件について謝罪はしていない。ザッカーバーグ氏も本稿執筆現在、この件については自身のFacebookに何も投稿していない。
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