「りんな」の技術を使ったローソン「あきこちゃん」は、なぜ「マジで!? やば!」などの“女子高生”口調にならないのか
女子高生AI「りんな」のシステムを用いたローソン公式アカウント「あきこちゃん」の技術の裏側が、LINE DEVELOPER DAY 2016で明かされた。
ローソンが先日、LINE公式アカウント「ローソンクルー♪あきこちゃん」を日本マイクロソフトの女子高生AI「りんな」と連携させたと発表した。ただし、あきこちゃんアカウントでは、りんなのように「マジで!? やば!」など“日本の女子高生”をイメージした受け答えをするわけではない。
「おはよう」と呼びかければ「おはようございます♪」と返ってくるし、「ねむたい」と言えば「いい夢をみてください♪」と丁寧な口調で返してくれる。りんなのシステムを用いているのに、なぜこのようなことが可能なのか――。LINEの技術者向けカンファレンス「LINE DEVELOPER DAY 2016」でその詳細が語られた。
りんなは、日本マイクロソフトが開発した人工知能(AI)。「マジで!? やば!」など“日本の女子高生”をイメージした受け答えをするのが特徴で、LINEとTwitterのアカウントを合わせて約400万のユーザーと会話している。そのりんなの技術をあきこちゃんに適応させるために、大きく「Text Style」「Kaomoji」「Profanity filter」という3つの技術を新たに導入したという。
Text Styleは、表記揺れと語尾をそれぞれ調整するものだ。表記揺れは例えば、同じ「食べたい」という表現でも「食べたーい」「食べたぃ」「食べたぁい」「食べたえ」など揺れが生じる。あきこちゃんはローソン店員という設定なので、適切なのは最もスタンダードな「食べたい」という表現。そこで、ネット上で収集した大量データの中から最も多く使われている表現(=標準的な表現)を導き出すシステムを開発し、あきこちゃんのキャラクターに合った言葉遣いをするようにしているという。
続いては語尾の調整。ネット上で集めた会話データを分類すると、「〜ございません」と表現する人は「〜でしたか」(Style1)、「〜じゃない」と表現する人は「〜なの」(Style2)、「〜だろ」と表現する人は「〜か」(Style3)といった語尾を使いやすいというように、グループ分けができるという。グループ分けに基づき、Style2やStyle3の表現を、さらに丁寧なStyle1の語尾に変換するコンバーターを作成。それを用いて、あきこちゃんに丁寧な対応をさせているという。
Kaomojiは文字通り、顔文字を適切なものに変換する技術だ。1文字で表現する「絵文字」の場合は文字コードが決まっているためルールづくりが容易だが、顔文字は、文字や記号の組み合わせで作られているため簡単ではないそうだ。
そこで、機械学習でたくさんの顔文字を学習させ、テキストの中から顔文字を自動で検出するシステムを開発。あきこちゃんアカウントでは返答を生成する過程で自動で顔文字を検出し、適切な顔文字や記号に変換したり削除したりするよう実装しているという。
そして最も重要なのが、不適切な発言をしないように作られたフィルター「Profanity filter」だ。
企業アカウントの場合、不適切な会話に対する許容度が低い。もちろん放送禁止用語や言ってはいけない言葉のリストはあるが、それらだけでは対応できなくなっているという。例えば、「0」(数字のゼロ)を「O」(アルファベットのオー)に置き換えるなど、さまざまな文字を使って不適切な文章を書かれると、なかなか対応するのが難しいそうだ。そこであきこちゃんアカウントでは、機械学習を用いて「こういうものは悪い」と教え、人だと把握しきれない書き方や単語も学習させているという。
こうしてローソン公式アカウントの「あきこちゃん」は、りんなのような“女子高生口調”ではなく、店員さんのような丁寧な口調で話すようになっている。
マイクロソフトの担当者は言う――「企業アカウントでりんなの技術を使う場合、いろいろな配慮が必要。りんなの技術をそのまま使うわけにはいかない。でも、りんなそのものは違う。りんなは、マイクロソフト社員もどんな受け答えをするか知らない。ただただ『自由に育ってくれ!』という気持ちだ」。
(太田智美)
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