日本最強の囲碁AI「DeepZenGO」、趙治勲名人と対局へ 「プロ棋士と戦えるレベルに達した」
日本最強の囲碁ソフト「DeepZenGO」が、人間のプロ棋士と対局する「第2回囲碁電王戦」が11月19〜23日に開催。相手は趙治勲名誉名人だ。
ドワンゴは11月9日、日本最強の囲碁ソフト「DeepZenGO」が人間のプロ棋士と対局する「第2回囲碁電王戦」を19〜23日に開催すると発表した。挑戦する相手は、史上最多タイトル獲得数(74)を誇る趙治勲名誉名人だ。ドワンゴの川上量生会長は「プロ棋士と戦えるレベルに達した」と話す。
DeepZenGOは、米Googleの囲碁用AI「AlphaGo」を上回る性能を目指し、2016年3月から開発中のソフト。囲碁ソフト「Zen」開発チームのチーフプログラマー・尾島陽児さんを中心に、AIを専門に研究する東京大学・松尾研究室が協力して開発を進めてきた。ドワンゴはハードウェアや開発スペースを提供し、日本棋院はプロ棋士との対戦機会を設けるなどのサポートを行っている。
「飛躍的に強くなった」――プロジェクト開始から約8カ月が経ち、「Zen」開発チームの加藤英樹代表はそう話す。ディープラーニングの手法を用いて「Zen」が不得意な序盤での立ち回りを見直したほか、ある局面でどちらが優勢化を判定するニューラルネットワークの技術「バリューネットワーク」を導入。プロ棋士の強さの指標「elo Rating」(イロ・レーティング)は約3000に到達し、昨年末時点でのAlphaGoのレートとほぼ並んだ(現在のAlphaGoのレートは3600程度)。
日本トップレベルの井山裕太棋士(約3600)には及ばないが、「これだけの成果が出れば、プロ棋士と戦う資格はある」(川上会長)と判断したという。
「人間が必要なくなる。ここで負けるわけには」
第2回電王戦は、そんなDeepZenGOの実力を試すのが狙いだ。川上会長は「現役のトップレベルの棋士で、新しいチャレンジに意欲がある方ということで、趙名誉名人に対局をお願いした」と話す。
対局は11月19、20、23日の三番勝負。ハンディキャップなしの互先(たがいせん)だ。対局のために用意するDeepZenGOは、CPUがデュアルソケット(44core)、グラフィックスカード4枚を搭載する。CPUが4個(48core)、グラフィックスカードが8枚のAlphaGoと比べるとマシンパワーは劣るが、「世代が最新版なので、同等のスペックと考えてもらって差し支えない」(加藤代表)という。
「今年3月の時点では、趙名誉名人に『10年早い』と言われた。この対局では、Zenがけちょんけちょんに倒すことが恩返しだと思っている」(加藤代表)
これに対し、趙名誉名人は「口は災いのもとだと、後悔はしている」としながらも、「Zenが素直に負けてくれないと“恩返し”にはならない」と笑う。「Zenは確かに強くなった。だが、人工知能の性能が人間を上回ったとなれば、私たちは必要ない存在になるかもしれない。僕はどうしても、あと50年くらいは生きていたいので、ここで負けるわけにはいかない」(趙名誉名人)。
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