探査機「あかつき」が見つけた“金星の弓模様”、立教大などメカニズム解明
金星探査機「あかつき」が2015年に観測した弓状の巨大模様の発生メカニズムを、立教大などの研究グループが解明した。
立教大学や宇宙航空研究開発機構(JAXA)などの研究グループは1月17日、探査機「あかつき」が金星の雲頂(雲の頂点)で撮影した南北約1万キロに及ぶ弓状の模様について研究結果を発表した。金星の地形の影響で大気に乱れが生じ、その上空に模様ができることが分かったという。雲頂を観測すれば、下層大気の様子が推測できる可能性があるとしている。
あかつきは2015年12月、金星の周回軌道に投入された直後、搭載している赤外線カメラで弓状の巨大な模様を捉えた。模様は4日間以上、金星大気中を吹く「スーパーローテーション」(秒速100メートルの東風)に流されることなくほぼ同じ場所にとどまり、研究者の間では「これまでどの惑星でも見たことがない」「これは一体何だろうか」といった驚きの声が上がっていたという(関連記事)。
研究チームが、金星の地形と弓状模様の位置を比較したところ、模様の直下には標高約5キロのアフロディーテ大陸があると判明。その地形を再現し、大気がどのような影響を受けるかをシミュレーションしたところ、地形の影響で生じた下層大気の乱れが「重力波」となって上空に伝わり、雲の上端(高度約65キロ)を通過するとき、弓状の模様ができると分かった。
地球でも、例えばアンデス山脈などで、同様に重力波が生じる現象が確認されている。金星で見つかった模様は、地球のケースをはるかに上回る大規模なもので、重力波が雲層を越え、上空の大気にも影響を与えている可能性があるという。
15年12月に観測した模様は、16年1月には見えなくなり、別の時期・場所で同様の模様を再確認したという。弓状構造の出現には他にも発生条件があるとし、より詳細なシミュレーションや、観測用プログラムの改修を行うとしている。
研究成果は、英科学雑誌「Nature Geoscience」電子版に1月17日付で掲載された。
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