MS、ホログラフやめるってよ 誤用の原因「ホロデッキ」について調べてわかったこと:立ちどまるよふりむくよ(2/2 ページ)
HoloLensに代表される「ホログラフ」「ホログラム」という言葉の誤用について、その原因を探ってみたら興味深い事実に突き当たった。
ホロデッキのアイデアを吹き込んだ人物
スター・トレックのプロデューサーであるジーン・ロッデンベリーは既に故人だが、誤用の責任をどうとってくれるのだろうか。そんなことを考えながら調べていたら、面白いことがわかった。
ホログラムをスター・トレックに採用するのはもともとロッデンベリーのアイデアではなく、彼にそれを吹き込んだ人物がいたのだ。
ジーン・ドルゴフ氏。彼がインタビューに応じている動画も見つかった。
ドルゴフ氏は1964年からホログラムの研究を続けている科学者で、ホログラムの研究をしているうちに、干渉波を使ったその原理を拡張することで立体の保存と再生が、映像だけではなく実体を持った物質「マター・ホログラム」として可能になる未来がありうるのではないかと考え、それを1973年にロッデンベリーに語った。
それがホロデッキとなった。
つまり、本物のホログラム研究者が、現在のホログラムの延長線上に考案した、正統的な「未来のホログラム」。それがホロデッキ技術なのだ。
誤用されている「ホログラム」は、このホログラム研究者がホログラムの拡張として考えたマター・ホログラムによって実現するような世界をイメージしているのではないだろうか。
もちろん、ただ3Dイメージを使ったものをホログラムと呼ぶのは正しくない。しかし、視線を動かしても追従し、反応してくるような、「生きている感」3Dオブジェクトが目指すべきものだという指針はここで定着したのだと思う。
TNGで登場してDS9でも無造作に使われている携帯端末PADDはiPadにしか見えないし、初代シリーズ(TOS)から胸につけているコミュニケーションバッジ(コムバッジ)はタップして通信開始するし(多くのBluetoothヘッドセット)、コンピュータとのやり取りはエンジニアであっても「コンピュータ」と呼びかけて主に音声で行う(SiriとかAlexaとか)。「リラックスする音楽かけて」とかはわれわれがすでに普通に使っている。
いつか、ホロデッキに相当するような、仮想3Dオブジェクトと触ってやりとりできるような日はやってくるのだろうか。落合陽一さんが2015年に発表した、「Fairy Lights in Femtoseconds」では空気のプラズマ化でそれに近いことを実現している。
ところで、スター・トレックのテレビ新シリーズである「Star Trek: Discovery」は当初1月にプレミア放映されるはずだったのだが、夏の終わりから初秋にずれ込んだらしい。時系列的にはTOS(宇宙大作戦)の10年前で、ホロデッキ技術登場以前になるので、ホログラムネタは多分ないものと想像できるが、それでも楽しみだ。
宇宙。それは人類に残された最後の開拓地である。ホロスイートを管理しているフェレンギ人のクワークが「VRカノジョ」という新しいホロプログラムをオススメしていたから、Discoveryが来るまでの間、人類未踏の宇宙に勇敢に航海してみるとするか。
関連記事
- MicrosoftのMR技術採用のAcer製HMD、まずは開発者向けに3月出荷開始
MicrosoftのMR(複合現実)プラットフォーム採用のサードパーティーHMD第一弾がAcerから3月に、まずは開発者向けに提供開始される。MicrosoftのMRは、2018年にはWindows PCだけでなく、Xbox Oneでも使えるようになる見込みだ。 - 「ソードアート・オンライン」は「すでに実現しつつある」――落合陽一さん・伊藤監督ら 「SAOが未来の世界観を決めている」
「ソードアート・オンライン」の世界はいつ訪れるのか、実現している技術はあるのか――筑波大の落合陽一助教、同アニメの伊藤智彦監督らが語った。 - 「ホログラフィック」と本当に名乗っていいの? 米MS担当に聞く「HoloLens」命名の理由
「HoloLensって本当にホログラムなの?」「視野角の狭さは?」「日本の開発者に期待することは?」――来日した米MicrosoftのHoloLens担当者に数々の疑問を聞いてみた。 - 初音ミクとスーパームーンを眺めたペーパームーンなMikulusナイト
Oculus Rift CV1を使う理由ができた。キラーアプリとなったMikulusの魅力とは。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.