「データが新しい通貨に」――インテル社長がIoTに燃える理由
インテルが関西電力などとIoTの実証実験。関西100世帯にセンサーを設置し、データを収集する。IoTビジネスに注力する狙いは。
インテルは4月12日、関西100世帯にセンサーを設置し、温度や湿度などの収集データを関西電力などに提供するIoT(Internet of Things)プラットフォームの実証実験を始めると発表した。ユーザーから収集したデータを、複数のサービス事業者に届ける仲介役をインテルが担い、データの秘匿性などを担保することで「データビジネスを効率化させる」という。
関西電力が提供している電力使用量チェックサービス「はぴeみる電」の利用者200万世帯のうち、100世帯が対象。家庭内にAtomプロセッサ搭載の宅内ゲートウェイと、Quarkプロセッサ搭載の環境センサーを設置。ゲートウェイを介してセンサーデータを外部に送信する。収集した温度や湿度、CO2濃度、震度などのデータは、関西電力とIoT基盤ベンチャーのKiiに提供する。
関西電力は、収集した室温データと電力使用量などを比較し、ユーザーに省エネに向けたアドバイスをするといったIoTサービスでの活用を見込む。Kiiは、データを匿名で集めて分析した上で、ヘルスケアや金融関連の事業者に提供するという。実験は9月にスタートし、来年3月まで行う予定。
従来、このようなIoTサービスを実現する上では、関西電力などのサービス事業者とユーザーが個別にデータをやり取りするケースが多かった。今回、インテルが“仲介役”となってデータを集約し、外部の事業者に提供する。収集したデータは、ユーザーごとに許諾しているサービス事業者だけが受け取れるよう開発環境やAPIを整備し、「個人情報保護と秘匿性の確保を可能にする」(インテル)という。
実験を通じてインテルは、セキュリティを担保できるか、複数のセンサーデバイスが安定してネットに接続できるかを検証する。結果を踏まえ、収集したデータを利用する事業者数の拡大や、全国展開などを検討していく。
「IoTビジネスの世界が広がっていく環境を作りたい」――インテルの江田麻季子社長はそう話す。環境センサーやゲートウェイに同社製プロセッサを組み込むことで売り上げを見込むほか、データを収集・分析して企業に提供することで、ユーザーにサービスとして還元するサイクルを加速させたいという。
「データが新しい通貨のような価値を持ち、全ての産業に影響が出る。こうしたサイクルを早く回せれば、マーケット全体の成長にもつながると信じている」(江田社長)
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